あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうしたやる気を下げてくる人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。今回登場するモチベーション下げマンは「ムダな形式を重要視する上司」について。
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日々の不安は多くあれど、日常のモチベーションダウンの要因となるのは上司の存在とよく聞きます。具体的にはいくつものパターンがありますが、典型的なのが形式を無駄に重要視する上司かもしれません。
例えば、社内で行われる「対して重要に思えない」会議でも欠席を許さない。取引先との重要な決済のための打ち合わせがその会議にかち合ったとしたら「会議優先」としか言わない。あるいは「承認プロセス」のシーンで、社内関係者への確認の書類は相当に煩雑で時間がかかり、仕事が滞りそうなので簡単な記載で提出したら「しっかりと書けるまで承認はしない」とかたくなに対応することしかできない上司……。
こうしたことに何の意味があるのでしょうか。本質的な判断ではないと感じて、モチベーションが下がりがちになりますよね。
自分自身も会社勤め時代に、こうした上司がいて、頻繁にモチベーションダウンさせられました。例えば、取引先での急なトラブルに際して、急きょ手土産が必要になったことがありました。立て替え払いで購入して間に合わせようとすると、
「立て替え払いはダメ。所定の申請書で申請してください。急ぎの決裁を頼めば、今日の昼すぎには決裁が下りるから」
と、あくまでも規則を順守させようとするのです。加えて、トラブル対応にも同行しようとしません。
「本件のようなレベルで過去に上司は同行してこなかった。前例がない」
と言い切られました。その上司はしゃくし定規なマネジメントに終始するのでモチベーションは下がるばかり。ついには退職を決意しました。
取材した広告代理店勤務のGさんは、会社までの出勤に2時間近くかかるところに住んでいます。普段はリモートで対応ができるようになり、出勤にかけていた4時間が業務に充てられ、残業時間が激減しかけていました。
ところが、いくつかの外部との契約関連で会社の押印が必要になってきました。電子承認が認められていないので会社に出社して行う必要があるのはわかります。しかし、取りまとめての押印ではダメ、承認のための説明は出社して行うべし、とのことでハンコのために大半は出社に戻すことになりました。
上司はよく仕事の生産性をあげるように指示をしてきます。だとすれば、しゃくし定規でない別の対応がある気がしてならない、このムダな時間によってモチベーションが大きく下がってばかりいると話してくれました。
あるいは別の観点で形式にこだわる上司もいるようです。上司としてのメンツを大事にするという形式です。