選挙で勝ったバイデン氏は、トランプ氏のコロナ禍への対応の失態を細やかに披露し、民主党がいかに厳しい対応を主張してきたかを繰り返し述べ、さらに「分断から融和で、トランプ氏に票を投じた国民とも一緒になって民主的な米国を作り上げていく」と強調している。トランプ氏は敗北を認めず、不正選挙であったと訴え、粘りに粘るだろうが、逆転ということはないだろう。

 問題は、バイデン大統領になって、トランプ時代とどこがどのように変わるか、ということだ。

 バイデン氏の勝利宣言を受けて、中国の共産党系の環球時報が社説で、「中国当局がバイデン氏側と可能な限り意思疎通を行い、中米関係を予測可能な状態まで回復するよう努力すべきだ」と主張しているが、中国国際経済交流センターの張燕生首席研究員は「民主党政権になっても中国との間で戦略的対決の期間は生じるだろう」と厳しく捉えている。

 なぜなら、中国は経済力でも技術力でも米国を抜き去ろうとしていて、購買力平価で計測すれば中国のGDPは米国を凌駕しており、技術力においても数多くの分野で世界最高水準に到達しようとしているからだ。それは当然、軍事力につながる。米国にとっては強い脅威なのだ。

 トランプ氏の何よりの特徴は露骨な米国第一主義だが、その政策はバイデン氏も変わらないのではないか。トランプ氏を散々批判しながら、その点についてバイデン氏はまったく触れていない。

週刊朝日  2020年11月27日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

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