米国の次期大統領は、民主党のジョー・バイデン氏にほぼ決まった。現大統領のドナルド・トランプ氏を厳しく批判してきたバイデン氏だが、ジャーナリスト田原総一朗氏は、対中政策においてはトランプ氏と大きく路線は変わらないとみている。
* * *
米国の大統領選挙で、ジョー・バイデン氏の勝利が確実となった。
現大統領のドナルド・トランプ氏の敗因は、新型コロナ禍の対応を大きく誤ったためだろう。米国の感染者数は約1040万人(11月12日現在)と世界一で、死者数も24万人超と世界でずば抜けて多い。その上、トランプ氏自身が感染して入院し、ホワイトハウスのスタッフたちは新型コロナの恐ろしさを感じながら、マスクを着けないトランプ氏への忠誠を示すためにマスクをせず、クラスターを発生させてしまった。
また、民主主義なんてくそくらえと言わんばかりに、自分といささかでも意見の異なる要人たちは、ハト派でもタカ派でも切り捨てたことなど、トランプ氏は許せないとする国民が多かったのである。
だが、トランプ氏は敗れはしたものの約7100万票と、オバマ前大統領の6949万票以上の票を獲得した。トランプ氏は4年前の選挙のとき、それまでのどの大統領も言わなかった「世界のことはどうでもよい。米国さえよければよい」と、露骨な「米国第一主義」を公然と打ち出し、それが多くの米国民に支持された。今回もトランプ氏の大失敗はわかっていながら、米国第一主義が7100万人もの支持を集めたのである。
ヒト・モノ・カネが国境を超えて世界市場で活動できるグローバリズム時代に、人件費が世界一高い米国の企業経営者たちが工場を人件費の安い海外に移設させ、米国の工業地域が廃虚となり、多くの国民が職を失った。そして、その多くがマスメディアの調査には表れない「隠れトランプ支持」となったのである。
そのために、事前の予測ではバイデン氏圧勝のはずだったのが、大接戦となった。