時節柄、マスク姿での審査になった。「どう選んだらいいのか……」と、初めての似顔絵審査に戸惑い気味のゲスト審査員の神田伯山さん(中央)に、「あんまり難しく考えないで、なんとなくで選んで」と審査のコツを伝授する山藤塾長。右は森下香枝本誌編集長
時節柄、マスク姿での審査になった。「どう選んだらいいのか……」と、初めての似顔絵審査に戸惑い気味のゲスト審査員の神田伯山さん(中央)に、「あんまり難しく考えないで、なんとなくで選んで」と審査のコツを伝授する山藤塾長。右は森下香枝本誌編集長
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大賞 杉山繁行さん「森喜朗」 (撮影/写真部・掛祥葉子)
大賞 杉山繁行さん「森喜朗」 (撮影/写真部・掛祥葉子)

 今年の似顔絵大賞は、新潟県の杉山繁行さん(62)に決定しました。21年ぶり2回目の受賞(第23、35回の岸本ますみさんに続く2人目)。「2020年らしさを感じた」と、山藤章二塾長が称賛した、見る人を引き込む似顔絵術に迫りました。

【似顔絵大賞2020 杉山繁行さんの「森喜朗」はこちら】

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 受賞をお知らせすると、「(大賞は)二度とないとばかり思っていたので、まったく予想していませんでした」と、杉山さん。前回の似顔絵大賞は今から21年前の1999年の第18回、小沢一郎などで受賞している)。

 今回は、鼻と口が栓抜きになった森喜朗元首相が題材だが、昔から田中角栄ら政治家を描くことが多かった。「山藤塾長と言えば、政治家似顔絵の第一人者。そこへ応募するからには、というのがあって。歴代首相は全部描いたと思います」とのこと。「彼らには、魑魅魍魎(ちみもうりょう)というか、やっぱり得体のしれない魅力がありますから」

 今回の大賞作・森喜朗元首相も、写真を見ているうちに、「鼻筋が意外と通っているな~栓抜きみたいだな~」と、突然アイデアがわいてきた。山藤塾長も、「今年の雰囲気というか、風を感じる作品だった」と大賞受賞を後押し。

 今回の受賞作をはじめ、応募作品はすべて0.05ミリのサインペンで描かれる。下書きなし、「1枚1時間。かかっても2時間」程度とか。ちょっとやそっと線が曲がっても「それもいい味になるから」と思って、描き直しはしないそうだ。仕上がりが似ているか、家族に見せることもないという。

 似顔絵塾がスタートした1981年の翌年から始めた応募は、「月に1本か2本。ガツガツ描かないほうが、新鮮な気持ちで描けるので」。このこだわらないスタイルが、応募歴38年の秘訣なのかもしれない。

 本業は3代続く「額縁屋」さん。そのため「地元の絵描きたちが頻繁に出入りしていました。子どもの頃から、絵に囲まれているのが普通で美術も得意。クラスメートの似顔絵をよく描きました」。

 ただし、その似顔絵も「描かれた人にあまり喜ばれなかったんですよね……。私の似顔絵って描かれた人に嫌われるというか……」。それは山藤塾長と同じ。塾長の口癖は「和田誠の似顔絵は描かれた人に愛され、山藤章二は嫌われる」です、と伝えると、「そうですか(笑)。似ている、似てないとか、出来や作品数にこだわらずにいたから、これまで行き詰まらずに描いてこられたんだと思うんです。これからも、描きたいときに描きたい人を、気負わずに描いていきたいですね」。

(構成・文/本誌・工藤早春)

週刊朝日  2020年12月25日号

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