この選手たちの力を引き出しているのが、18年就任の山本佑樹監督だ。本番に合わせて選手の調子を上げる「調整力」にたける。その秘訣(ひけつ)は練習のタイミングや目的、効果をそのつど丁寧に説明するところにあるようだ。部のツイッターによると飯田晃大主務は「(選手は)監督の思想に染まりつつあります」。#(ハッシュタグ)ではユウキイズムが掲げられている。
さらに今大会に向け、山本監督は優勝を目標に掲げて選手を鼓舞している。1年前の反省があるからだという。アンカー勝負で3位争いに食い込みながら最後に脱落した。
「目標順位が『(予選会免除となる)シード権内(上位10校)』でした。どうしても3番を取りたいという(他校との)気持ちの差が最後に出ました。優勝を狙うという強い気持ちでいかないと、箱根では勝てません」
山本監督は言う。
「12月に入って調子を上げているのは4年の大保海士や長倉奨美。主将の前田がチームをまとめ、3年の手嶋杏丞や鈴木らが皆を和ませてくれる。(1年で唯一エントリーの)児玉真輝もいい雰囲気です。仲良くやっているチームです。2区と4区が大事。とにかく往路(優勝)が絶対です」
「長距離界のレベルは年々上がっていますが、今大会はそれが一段と増している気がします。1区で30秒とか1分とか遅れると挽回(ばんかい)は大変。1区から強い選手が来るという感じになっています」
ものまねアスリート芸人で、駒大時代に駅伝主務を務めたM高史(えむたかし)さん(36)は、これまで以上にハイレベルな戦いになると予想する。
「シューズの(進化の)影響もあるとは思いますが、低酸素トレーニングの導入など大学のバックアップも大きい。母校の上位10人の1万メートルの平均タイム、28分26秒81は史上最速。相当すごいです。駒大にかなり勢いがあります」
箱根といえば、山を駆け上がる5区と一気に下りる6区も見逃せない。
「応援自粛の中で、山をどう制するか。(Mさんがものまねをしている)男子マラソンの川内優輝選手も学生時代、関東学連選抜で6区を走りました。6区はニューヒーローの誕生が楽しみな区間でもあります」
1年生が注目される大会でもある。順天堂大・三浦龍司や中央大・吉居大和のほか、Mさんが挙げるのは東洋大・松山和希だ。
「彼はロードに強く、アップダウンにも強い。気持ちも強い。駅伝にすごく相性がいい。全日本でも2区を走りました。東洋のエースクラスになっていくと思います。専修大の木村暁仁選手も次期エース候補になるのでは。木村選手は駒大・鈴木芽吹選手と同じ長野・佐久長聖高出身。木村選手が寮長で鈴木選手が主将でした。同じ区間になれば、2人の戦いも見ものです」
(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号