イラストはイメージです(Getty Images)
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 冬の入浴前後に起きることが多い「ヒートショック」。温度差による急激な血圧変動が原因だ。ただ、気を付けなければいけないのは風呂場だけではない。日常生活での注意点やリスクを減らすコツについて、訪問看護ステーション所長で看護師の佐野みゆきさんに聞いた。

【衝撃の統計データ】入浴中の事故は12月~2月に集中

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 ヒートショックとは、急激な温度差から血圧が大きく上下変動することで身体が受ける危険なショック症状のこと。ふらつきや失神のほか、心臓や脳の血管にダメージを与えて心筋梗塞や脳梗塞を発症することもある。寒さが最も厳しい季節の12月~2月、暖房のきいた暖かい室内と、寒い浴室や脱衣場、トイレなどの場所に移動したときにおこりやすい。

「寒い脱衣場で衣服を脱ぐと、体温を逃さないよう血管がキュッと締まって急激に血圧が上がります。その状態で温かい湯につかると、締まった血管が急速に拡がり、上がった血圧が下がります。血圧が短時間に上下すると身体に大きな負担がかかり、命取りになりかねません」

 入浴中の事故で亡くなる死亡者数は推定で年間約19,000人。うち5,000人以上がヒートショックによる死亡とみられ、交通事故死亡者数(3,532人/2018年)をはるかに上回っている。身体機能が衰えた高齢者に多いが、体調や状況によって若くても発症する危険がある。自分自身はもちろん、家族に見守りが必要な高齢者がいる場合は細心の注意が必要だ。

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 入浴時の予防はまず、室内と浴室や脱衣場との温度差を少なくすること。脱衣場に小型の暖房器具を置くのがベストだが、難しければ近くの部屋ドアを開け、暖房の温風が少しでも脱衣場に流れ込むようにする。入浴前は温水シャワーで浴室の壁や床をたっぷりの湯気で満たしておく。自動追い焚き機能が付いた浴槽なら、風呂が沸いたら浴槽のフタを開けておくだけで蒸気が充満し、より手軽だ。

 忘れてはいけないのが風呂いす。座ったとたん冷たさに飛び上がらないよう、使う直前は必ず湯をかけて温めるようにしよう。
「冬の入浴で私が個人的に実践している工夫は、タオルや肌ケア用品をまとめて持ち込み、入浴後の肌の手入れも暖かい浴室で全部済ませてしまうこと。脱衣場へ戻ったら即着替え。温まった身体が冷えずオススメです」

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食後1時間以内の入浴が危険な理由