藤井聡太フィーバーに沸いた2020年が終わり、次の展開が待ち遠しい将棋界。プロへの登竜門、奨励会では藤井二冠と同様の「小学生初段」が活躍中だ。AERA 2021年1月11日号では、「ポスト藤井」と目される期待の小学生に取材した。
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高校生の藤井聡太二冠(18)が初戴冠、二冠奪取、八段昇進と最年少記録を次々と塗り替えた2020年が終わり、将棋界も新年を迎えた。藤井二冠と渡辺明名人(36)、豊島将之竜王(30)、永瀬拓矢王座(28)で8大タイトルを独占する4強時代が続くのか、ベテランの復権や新星の台頭があるのか、興味は尽きない。
■数学脳+名伯楽の指導
そんな中、プロ予備軍の奨励会では、早くも「ポスト藤井」とも目される新たな才能が輝きを放ち始めている。
関西奨励会所属の小学6年生、山下数毅君(12)は20年2月に2級、8月に1級へスイスイと昇級し、10月には初段になった。小6で初段になったのは藤井二冠、豊島竜王ら過去に数人しかおらず、渡辺名人や羽生善治九段(50)ですら中学生になってからなので、傑出した才能と言えるだろう。
父の剛さんは京都大学数理解析研究所講師で、世界的な数学者。母の紀子さんも大手予備校「河合塾」で数学講師を務めるという「数学脳」の継承者でもある。
その山下君が紀子さんと一緒に、取材に応じてくれた。身長150センチ、半ズボンでランドセルを背負った姿は凛々しくもあどけない。5歳のころ、タブレット端末のパズルの中に詰将棋があり、駒の漢字に興味を覚えたのが将棋を好きになるきっかけだったという。ほどなく近所の将棋教室に通って実力をつけ、小4で名伯楽として知られる森信雄七段(68)の門下生に。奨励会にもこのころ入会した。
森七段は、羽生九段の好敵手ながら闘病の末29歳で壮絶な死を遂げた村山聖九段や、大阪大学大学院在学中に竜王位を獲得した糸谷哲郎八段(32)らトップ棋士を多数育てており、山下君はその弟弟子となる。