TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、新型コロナウイルスに感染したプロデューサーをモデルにしたラジオノベルについて。
【写真】隔離されたホテルで「家族に絶対うつさない!」と決意を書いた紙コップ
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同じチームで番組を作ってきたプロデューサーが新型コロナウイルスに感染したのが昨年4月。緊急入院と聞き涙が出た。20年以上の付き合いで、妹のような存在だった。
幸い軽症で入院は数日、その後、療養ホテルに入った。しかし見舞いには行けない。その間、壮絶な心の葛藤があったと知った。自宅療養になり、ZoomでPCの画面越しに自分の経験を番組に生かしたいと彼女はピースサインを送ってくれた。「身体は陽性になったんだから、心もポジティブになって乗り越えます!」
業務に復帰し、彼女も合流した文芸評論家加藤典洋さんの追悼特番が放送文化基金賞最優秀賞(番組部門ラジオ番組)を受賞、その祝う会で自身のコロナ体験に彼女が触れた時、スタッフが番組にしようと次々に手を挙げた。
「隔離され、いつまで一人でいなきゃいけないのだろうと戸惑った。ホテルのテレビで岡江久美子さんが亡くなったということを知った。そんな時、エレベーターにコロナ患者同士LINEでつながりませんかという貼り紙を見つけた」と彼女が回想する。当時は陰性が2回続けて出ないと退所できなかった。「陰性になっても次に陽性が出ればやりなおし。それを繰り返す人もいた。コロナは自己責任と言われてもいたから、お互いLINEで傷を舐め合い、救われました」
ワイドショーはコロナ恐怖をまき散らし、それを観る罹患者を苦しめた。身も心も蝕むコロナ。彼女のスマホに残されたLINEのやりとりを作家小川哲が原稿にし、それをもとにディレクターや構成作家の打ち合わせが始まった。
「ホテルから出られる喜びももちろんだけど、仲間から離れていく一抹の寂しさもあるだろう」「家族や恋人とも全く会えない。陽性が続いてなかなか退所できない人も」