サッカーW杯ロシア大会のセネガル戦で得点を決めて喜ぶ本田圭佑(中央)=2018年6月(C)朝日新聞社
サッカーW杯ロシア大会のセネガル戦で得点を決めて喜ぶ本田圭佑(中央)=2018年6月(C)朝日新聞社
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 ブラジル1部のボタフォゴを退団したサッカー元日本代表・本田圭佑の送別会の動画が拡散され、批判が高まった一件で、本田の「持論」が火に油を注ぐ形になり、さらに炎上している。

 送別会は、コロナ禍の昨年末にリオデジャネイロで開かれた。動画を見ると、複数のチームメートと会食し、マスクをしていない本田が楽しそうに踊っている姿が映されている。

 本田はプレミアム音声サービス「NOW VOICE」に投稿し、この動画の経緯について説明。

「最後に『お別れのあいさつをしたい』と僕が開いて、僕が招待した」

 と自身が会を主催したことを明かし、練習終わりのランチで20人弱が集まったという。

「実際、たくさん感染して死んでいる人がいる事実が存在しているのは間違いないので、それで気を悪くした人がいるなら申し訳ない」

 と謝罪した。

 一方で、

「食事はいつもしているっていうことでいったら、試合前は全員20名、30名、チームは毎回ホテルで食事しているわけじゃないですか。当たり前の話でどこのチームスポーツもやっている。世界でリーグストップしていない」

 と一部の意見に反論した上で、

「ご飯している時に人はマスクをしない」

 と語った。

 日本だけでなく、ブラジルでもこの動画に批判が殺到していることについても言及。

「チームの成績が悪く、僕自身が思った結果が出せなかった。(そして)チームを離れていった。全部悪く解釈したら、何の言い訳もする必要がない動画だなと思っている」

 と反省を口にした。ただ、会を開催したことについては、

「後悔なんて全然ない。俺からしたら来てくれた奴はめっちゃいいやつが多くて、思い通りいかなかったけど、『ありがとう』と素晴らしい会だった」

 と振り返った。

 確かに、ブラジルでも批判が殺到しているのは新型コロナウイルスの感染が収束していない中で送別会を開いたことだけが原因ではないだろう。本田は昨年1月末にボタフォゴに加入したが、公式戦合計27試合出場で3得点。チームも公式戦で12戦未勝利と白星に見放されるなど低迷している。本田はシーズン途中に負傷離脱し、今月19日に出場したコリチーバ戦を最後に退団の意向を表明。

「チームの救世主になるどころかまったく通用しなかった」

「苦しみにあえぐチームを捨てて出ていく」

 など現地のメディアから辛辣(しんらつ)な批判を受けていた。

 ただ、本田はこれまでにコロナの危機を訴えてきただけに、今回の弁明に落胆の声が多いのも事実だ。自身のツイッターで昨年4月、

「まだコロナ危機のピークはよく分かっていません。軽視だけはしないように情報共有していきましょう!」

「無駄に外に出て人に接触しないように。改めて共に勇気を出して自粛しましょう」

 と呼びかけ、ブラジルで感染者が急増していた同7月には、

「こっちは感染者数200万人超えたっていうのに。人も毎日死に続けてるよ。ホンマ他人事ちゃうよ」

 と逼迫(ひっぱく)した状況を伝えていた。同12月にも、

「経済対策に73兆円。中小企業支援もそうですけど、寝ずに働いてる医療従事者への手当てにしっかり回して欲しい」

 と望んでいた。

 ネット上では、

「本田さんに失望したよ。あれだけコロナの脅威を訴えてきたのに。動画が拡散されると、チームで大人数で食事しているのを持ち出して反論して……。送別会は自分で開いたんでしょ? 一緒にするのはおかしいだろ」

「今まで積み重ねてきた信頼がこの一言、行動で失望に変わりました。結局、自分が一番可愛いんだと……。影響力があるからこそ、謝罪の一言だけだったらおさまったのにと。プレーヤーとしては好きだったんですが。現時点では日本の代表としてふさわしくないですね。努力や信頼は一瞬にして失います。また時間をかけて取り戻してください」

 などのコメントが。

 本田はポルトガル1部ポルティモネンセ入りが有力視されているが、

「ぎりぎりまで可能性を模索したい」

 と語っている。

「ビッグクラブでやりたいという思いがあるのでは。ただ34歳という年齢でボタフォゴでのパフォーマンスを見ると、状況は厳しい。しかも、欧州はコロナの感染拡大を受けて、各国が飲食店の店内営業禁止などを伴うロックダウン(都市封鎖)を実施している。そんな中で今回の動画で騒動になっている本田に対してクラブ幹部の心証は良くないでしょう」(サッカー専門紙ライター)

 ブラジルを去り、新天地としてどこのクラブでプレーするか。失った信頼はピッチ内外で取り戻すしかない。(牧忠則)

※週刊朝日オンライン限定記事