2月8日に東京・お台場ビッグトップで開幕するシルク・ドゥ・ソレイユの公演。ひと足先にソウル公演で観たその進化とは──。AERA 2023年2月6日号より紹介する。
【フォトギャラリー】シルク・ドゥ・ソレイユの写真をもっと見る
* * *
外は気温マイナス10度。約2カ月半続いたシルク・ドゥ・ソレイユの「アレグリア-新たなる光-」ソウル公演。昨年末に訪れると、開演を待つ満席の観客の熱気に包まれていた。 冒頭、11人のアーティストによる大技「アクロ・ポール」が始まる。長さ5メートルほどの細いポール(棒)の上に人が立ち、その上で軽々と空中回転してポールに着地。そこからさらに別の棒の上に立つ人の肩へ、さらにその肩に乗った人の肩へとジャンプして飛び乗ってゆく。ハイライトは、3人目の頭の上でなんと片手逆立ち。究極の離れ技に、驚きの大喝采(だいかっさい)が沸き起こった。
「ブラボー!!」
ビッグトップ(会場)いっぱいに響き渡る大歓声。鳴りやまぬ拍手。
そうそう、これだ。サーカスはやっぱりライブで観なくちゃ。体の奥底から湧き上がる躍動感と、一瞬も目が離せない緊張感。生身の人間から発せられるエネルギーが会場じゅうに渦巻く。思わず鳥肌が立った。こんなにゾクゾクしたのは久しぶり。これぞ、シルク・ドゥ・ソレイユの神髄だ。
■紙吹雪が一瞬で消える
サーカスにつきもののクラウン2人の掛け合いが頻繁に登場する。なかでも演目「クラウン・スノーストーム」は、猛吹雪に見立てた紙吹雪が信じられないほど会場全体に舞い散って、それが一瞬にして消えていくイリュージョンをみせてくれる。
「アレグリア-新たなる光-」は古い王国を舞台に、新しい価値観を持つ若者たちが旧来の権力に縛られる貴族たちを乗り越えていこうとするさまを、およそ57人のアーティストが表現する。舞台奥の突起のある巨大な建造物は、王冠をかたどっており、朽ち果てた宮殿を表現している。
1996年と2004年の2度日本ツアー公演を行ったオリジナル版「アレグリア」は、演劇出身の演出家フランコ・ドラゴーヌ(22年9月に急逝)が94年に演出した大ヒットロングラン作品。約19年間にわたって世界各地を巡演した後、13年にいったん閉幕した。
本作は、その核を残しながらジャン ギー・ルゴーの演出によって19年に刷新された、いわば「“新生”アレグリア」だ。耳に残る「アレグリア~」というテーマソングはそのままに、ビートをより強調した音楽や光を帯びてきらきらと光り輝く衣装など、現代感覚が重層的に織り込まれている。コロナ禍が起こる以前、あるインタビューでルゴーはこう語っている。
「アレグリアは希望の歌。今、世界は暗く不条理で、生き残るのに簡単な時代ではない。私たちは、そんな困難に立ち向かう人々の心からの叫びを感じとって、リンクしなければならないんです」