人気キャラクターの冨岡義勇(画像はコミックス第5巻表紙カバーより)
人気キャラクターの冨岡義勇(画像はコミックス第5巻表紙カバーより)

 大ヒットアニメ『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの中で、常に人気上位にランクインしている水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)。「週刊少年ジャンプ」の2017年47号の投票では4位、20年47号では2位と、その人気は根強い。コミックス第1巻から登場している義勇は、鬼殺隊の柱として常に前線で戦い、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)と禰豆子(ねずこ)兄妹の恩人として慕われているが、ときおり、ほかの「柱」たちからは厳しい目を向けられる。人気キャラにもかかわらず、作中では冨岡義勇が「嫌われ者」としても描かれる理由を考察した。
(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)

【写真】嫌われているのに人気がある?「上弦の鬼」はこちら

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■「かっこいい」冨岡義勇

 鬼の討伐部隊である「鬼殺隊」の中で、「最高位の剣士」とうたわれる「柱」・冨岡義勇。彼は、鬼と化してしまった竈門禰豆子と、その兄・炭治郎を命がけで守った人物でもある。彼の状況判断力、周囲からの信頼の厚さ、竈門兄妹に「救済への道」を切りひらいた行動力など、どの要素をとってみても、冨岡義勇には非の打ちどころがない。

 公式ファンブックには、作者の吾峠呼世晴氏みずからが、「目がしらをキュッと入れると、よりイケメンになります」と義勇の外見について注意書きをしている。外見、内面ともに、義勇というキャラクターは、その突出した「かっこよさ」で読者たちを惹きつける。

■冨岡義勇は「嫌われ者」?

 しかし、冨岡義勇にまつわる「周囲からの評判」には、「みんなからの嫌われ者」というエピソードがついて回る。たとえば、「下弦の鬼」と戦っている炭治郎らを救出する際には、一緒に行動した蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)と義勇との間で、言い争いが起きている。

<そんなだから みんなに嫌われるんですよ>(胡蝶しのぶ/5巻・第43話「地獄へ」)

 義勇はしのぶに「俺は 嫌われていない」と反論するが、彼らの議論はこじれにこじれ、しのぶから「すみません 嫌われている自覚がなかったんですね」と一刀両断されてしまう。他の登場人物と比べると、義勇は表情を崩すことが少ないキャラクターだ。しかし、しのぶから一連の厳しいセリフを言われた際には、そのクールな美しさがそこなわれてしまうほどに、動揺が顔にあらわれる。外見も内面も完璧なはずの、義勇のどこが「嫌われ」てしまうのか。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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柱たちから次々と叱られる義勇