菅内閣への不信感の要因ともなっているコロナ禍の医療崩壊。ジャーナリストの田原総一朗氏は、その背景を説明し、医療制度改革を訴える医師の主張を紹介する。
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1月25日に朝日新聞が報じた菅義偉内閣の支持率は33%で、不支持率は45%であった。
去年の12月21日に報じた支持率は39%、不支持率は35%であった。そして、この時点で多くのマスメディアは、菅内閣の持続は困難だとして、4月で終わらざるを得ないと断定する政治評論家たちが多かった。
それが33%に落ち、支持・不支持が逆転したのである。
菅内閣が発足した去年9月の時点では支持率が65%もあったのだ。それがなぜ、これほどすさまじい落ち方をしたのか。
今回の世論調査で、新型コロナウイルスへの政府の対応について、「評価しない」が63%で、「評価する」は25%。さらに緊急事態宣言については、「遅すぎた」が80%、「適切だ」は16%しかなかった。
国民の菅内閣に対する不信感、憤りの要因は、コロナ禍に医療界があまりにも対応できていない惨状があるからであろう。
現在、新型コロナに感染しているにもかかわらず、入院できずに自宅に待機している患者が、東京だけで約5千人。全国で自宅療養者は約3万5千人にも上り、待機中に亡くなる事例が次々に生じている。
日本医師会の中川俊男会長は「現実はすでに医療崩壊」だと言い、新型コロナは「(他のウイルスとは異なり)感染力がけた外れに強く、何よりも重篤化率、致死率の違いがある」と述べている。そして、専門家やメディアの多くもそう主張しているのである。
だが、新型コロナの感染者も死者も、米国や欧州諸国に比べると、けた違いに少ない。数十分の一である。そして、日本の医療病床数は160万床と、人口当たりの数はずば抜けて世界一なのである。
それにもかかわらず、なぜ医療崩壊が起きているのか。
実は、医療病床数は160万床でも、新型コロナの患者を受け入れられる病床数は2万7千床と極端に少ないのだ。