“プロ経営者”、カリスマ経営者の事件や不祥事が続いている。ずばぬけたビジネス手腕と輝かしい経歴を持ち、分別をそなえた年齢である。お金も地位も名誉もあるカリスマたちは、なぜ踏み外したのか。心理学者や精神科医、夫婦カウンセラーら、専門家に聞いた。
* * *
なぜこの人が──。
そう声を出さずにはいられない。カリスマ経営者による事件や不祥事が続いている。
台湾発のティー専門店「ゴンチャ」を展開するゴンチャジャパン(東京・渋谷)は2月24日付で原田泳幸会長兼社長兼CEO(72)の辞任を発表した。
原田氏は日本マクドナルドホールディングス(HD)やベネッセHDなどの社長を歴任し、プロ経営者ともてはやされたが、妻でシンガー・ソングライターの谷村有美さん(55)に自宅で暴力を振るったとして、同19日、傷害罪で罰金30万円の略式命令を受けた。
同10日には、大手スポーツ用品の「アルペン」(名古屋市)の水野泰三元会長(72)が、強制わいせつ致傷と窃盗、暴行容疑で逮捕され、衝撃が走った。
水野氏はアルペンを創業し、浅田真央さんら有名スポーツ選手の“スポンサー”としても有名だったカリスマ経営者だが、事件後に会長を辞任。被害者と示談が成立したこともあり、名古屋地検は同22日、不起訴とした。
さらに2月には小川彩佳アナウンサー(36)の夫で医療ベンチャー「メドレー」の代表取締役医師だった豊田剛一郎氏(36)の女性との不倫騒動も話題になった。
「昭和どころか、近代日本以前の価値観。ゴーマンもいいところ」
そう憤慨するのは、夫婦問題研究家の岡野あつこさんだ。
「財力があれば浮気も亭主関白という名の暴力も、かいしょうのうち──、と考えている男性はいまだに存在します。女性を下に見て、何をやっても許されると思っている」
社会心理学を専門とする碓井真史・新潟青陵大学教授は、環境による影響が大きいと分析する。
「経営トップは、基本的に人に否定されることがない。トップが何か口にする前に周囲や部下は、忖度(そんたく)して意向に沿うように動く。ただでさえ経営トップは、ストレスがたまる生活ですから、お酒や夜のお店や趣味で発散する。だから口説いている女性に拒否されたり、相手が思い通りに動かない状況に遭遇すると、カッと激高しやすい」