震災の被害がとりわけ甚大だった3県。地元情報に詳しいタウン誌編集部が、頑張る生産者を応援すべく、美味なる品を推薦してくれた。巣ごもり生活の今、被災地から取り寄せて、舌鼓を打つ。
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どんなにネットが発達したところで、地元の人だからこそ知る逸品がある。美味いのは当たり前。タウン誌編集者たちが自信を持って推薦した品々には、未曾有の震災を乗り越えた生産者の情熱も込められている。
まずは岩手県。「アキュート」(盛岡市)の海老名勝宏編集長は、三陸海岸の魚介類、内陸部の菓子やワインなど、バランスよく薦めてくれた。
興味深いのは、宮古市で新たなブームとなっている瓶ドンだ。
「もともと三陸では、生ウニを、滅菌した海水と一緒に牛乳瓶に入れて保管、流通させるシステムがあったんです。これをアレンジして、2~3年前から宮古市の飲食店が出し始めたんですね。ウニなどを瓶の中に入れて提供するのが面白いと、話題になりました。震災後に誕生した商品の代表格です」(海老名さん)
また、「岩手県は畜産が盛んで、ご当地ヨーグルトも多いんですよ」と言うように、県内には乳製品会社が大小多数ある。その中のひとつ、西和賀町の湯田牛乳公社の担当者は語る。
「県内の牛乳とヨーグルトの消費量は、すごく多いんです。うちのヨーグルトの主力商品は800ミリリットルの袋入りですが、袋ごと一気に食べてくださるという方も多いんですよ。私たちは内陸部で、震災の被害は少なかった。地震の後は、沿岸部に牛乳と乳製品を届けさせていただきました」
宮城県に移ろう。「Kappo 仙台闊歩」(仙台市)の小林薫編集長は、被害の大きかった沿岸部生産者にまつわるエピソードを披露してくれた。
「気仙沼のカネダイさんは、震災当時アフリカにマルズワイガニ漁に出ていた1艘の船以外、すべての工場や店舗を失いました。その後、新たなブランド・かに物語を興して、マルズワイガニの魅力を発信し続けています。山元町の田所食品さんは大正7年の創業以来、ブドウジュースを生産してきました。津波の直撃を受けて廃業も考えたそうですが、1本だけ残ったブドウの木を見て奮起したそうです」