NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主役である実業家・渋沢栄一が信奉していたことで、いまふたたび「論語」が注目されている。論語は、2500年前の思想家・孔子の教えをまとめた書物で、生き方の指針となる言葉の宝庫だ。「仁(=思いやり)」を理想の道徳とし、企業経営だけでなく、迷える現代の子育てにも役立つ言葉がたくさんちりばめられている。現代の親の悩みに対する処方箋として、「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、孔子の格言を選んで答える本連載。今回は、「一人っ子の4歳の娘がふびん」という母親へアドバイスを送る。
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【相談者:4歳の娘を持つ30代の母親】
4歳の娘を持ちながら、パートタイムで働く母です。一人っ子の娘にさびしい思いをさせていないか心配です。幼稚園から帰ってくると遊び相手の友達やきょうだいがいないため、家事の最中にも「ママ、ママ」「一緒に遊ぼう」と催促されます。「お料理しているから待っていてね」と断ると、一人ポツンとままごとをしたり、テレビを見たり。娘のさびしそうな背中を見ると胸が痛みます。かつては2人目を希望していましたが、なかなか授からず、流産したことや経済的な問題もあって、夫と話し合い、きょうだいをあきらめました。ですが、娘の幼稚園のクラスは今、二人目ラッシュ。妊娠しているお母さんを見ると、「おめでとう」が言えず、私と娘が周りから取り残されたような暗い気持ちになってしまいます。一人っ子の娘との接し方についてアドバイスをいただけませんか。
【論語パパが選んだ言葉は?】
・「四海の内、皆な兄弟なり。君子何ぞ兄弟無きを患(うれ)えんや」(顔淵第十二)
・「力足らざる者は、中道にして廃(はい)す。今、女(なんじ)は画(かぎ)れり」(雍也第六)
【現代語訳】
・「この世界中のみんながあなたのきょうだいじゃないか。君子というものは、自分にだけきょうだいがいないだなんて、悩むものではないよ」
・「本当に力がない人ならば、途中で挫折して引き返すはずだ。今、君は、自分の限界をはじめから決めてかかっている」
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