「感じないです。だって、役者だから。僕ね、リアリティーばかりを追求する俳優って、嫌いなんですよ。ある海外の有名な俳優さんで、一晩飲み明かした朝の場面を撮影するのに、『俺も実際に一晩飲んできたぜ』という人がいて、相手役の女優さんが、『私たちはアクターなんだからアクティングしましょう』って諭したっていう話を聞いたことがあるんですが、俺はその女優さんの気持ちがすごくわかる。俺たちの仕事は、想像力を駆使する仕事だと思ってるんで。リアルを追求するだけなら、役者じゃなくてもできるじゃないですか。結局ね、映画にしてもドラマにしても舞台にしても、言ってみれば大きい嘘みたいなものじゃないですか。この映画だって、みんなでちっちゃい嘘を積み重ねて、本当のことのように見せている。あとは、その大人が必死になってついた嘘を、観た人に楽しんでもらえれば、それでいいです」
想像力だけで補えない部分があるとすれば、その役の持つ“本質”のようなもの。ゆっくりと言葉を選びながら、「その人にしか出せないような“何か”にこの先はアプローチしていきたいですね」と語る。
「目に宿る光やまとうオーラ、役の本質が何なのかは、役によって違うし、どうやったらそれにたどり着けるのかもわからない。でも、そこに近づけるようになったら、今後の役者人生はもっと楽しくなるかなとも思うんです。それに、俳優ってなんだかんだでエネルギーのいる仕事なんで、まずは健康第一で。腸内細菌が不活発で、内臓も見た目も不健康だったら、気持ちがすさむだけじゃなく、肉体的にもできないことが増えていく一方になっちゃいますからね(笑)」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※記事前編>>「窪塚洋介『どん底だった自分を思い出す』 主演映画で中年の悲哀をリアルに」はコチラ
※週刊朝日 2023年2月10日号より抜粋