昨年は、PARCO劇場で三谷さん書き下ろしの舞台「大地」も観賞した。全体主義国家を舞台に、「反政府主義」のレッテルを貼られ、「演じることを禁じられた」俳優たちの姿を描いたその舞台に、大きな感銘を受けたという。
「コロナ禍だからと、あえてソーシャルディスタンスを取り入れた演出をされていたり。逆境を逆手にとるエネルギーが痛快でした。その後で、『23階の笑い』に参加させていただいたので、今はすっかり『この人についていけば大丈夫』という絶大な信頼を持っています」
去年、「母を逃がす」という舞台が中止になった瀬戸さんは、今も、「本当に上演できるのだろうか?」という不安の中で、稽古を重ねている。心の支えになるのは、舞台を楽しみにしてくれている人からかけられる言葉だ。
「『観に行きます』『楽しみにしてます』という言葉をいただけることがすごく嬉しいです。いろんな人と支え合っているんだという実感がある。こういう状況だからこそ生まれるささやかな喜びを、一つでも多く見つけていけたらいいなと思いますね。立ち止まらずに」
(菊地陽子 構成/長沢明)
瀬戸康史(せと・こうじ)/1988年生まれ。2005年俳優デビュー。主な出演作に、NHK連続テレビ小説「あさが来た」「まんぷく」、ドラマ「透明なゆりかご」「私の家政夫ナギサさん」、映画「事故物件 恐い間取り」、舞台「関数ドミノ」など。WOWOWドラマ「男コピーライター、育休をとる。」が7月9日から放送スタート。劇場版「ルパンの娘」は10月15日公開、主演舞台「彼女を笑う人がいても」(仮題)は12月上演予定。
※週刊朝日 2021年7月2日号より抜粋