アオイヤマダ(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
アオイヤマダ(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

「東洋的な顔立ちで、身体つきも独特だから、洋服の見せ方も、欧米のモデルとは違う。激しく動いているわけでもないのに、一瞬一瞬の所作が、何か過去や未来の時間を連れてきているような、指と指の間から静かな風が吹くような。とにかくオリジナルの雰囲気が素敵でした。私もこういう表現をしてみたいなと思ったし、そこで初めて自分の生きがいというか……『生きてていいんだよ』みたいに言われた感じがしたんです。洋服にしても野菜にしても、感情みたいなものも、ダンスって、何かと何かの接着剤みたいな役割を果たすんですよね。人間の肉体がそれらを身につけて舞うことで、無機的なものが有機的になるというか。小夜子さんのショーでは、ダンスがすべてのつなぎ目になって、言葉にはできない何か、概念として存在して浮遊してる何かを表現している気がしました。小夜子さんのダンスって、それを見たときに考える時間や余白みたいなものを与えてくれるから、いろんなことを想像できるし、遊びやすいんです」

 それまでは、ずっと“言葉”から逃げてきた。

「でも、心揺さぶられるものに触れたとき、それを言葉として表せないことが悔しかった。以来、『これを言葉で表現するとしたら?』ってことも、探るようになりました」

(菊地陽子、構成/長沢明)

※記事後編>>会うことでしか見えないものがある アオイヤマダが「直接的な関わり」を大事にする理由はコチラ

週刊朝日  2022年12月9日号より抜粋