鼻マスクにも神経をとがらせるようになってきた※写真はイメージです(Getty Images)
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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、新型コロナウイルスの感染が急拡大する今の状況について。

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 新型コロナウイルス・デルタ株の感染拡大で、都内に暮らす者としては、今までと違う種類の緊張を強いられている。身近な人が感染した、亡くなったという声を聞くようになってきた。先日は、ワクチンを2回接種した後にデルタ株に感染したという方の話を聞いた。ワクチンの効果で重症化しないと言われてはいるけれど、ワクチンを打ったのに感染なんて……と本人の落胆はとてもとても大きい。

 陽性者とすれちがっただけでも、エアロゾルを吸い込めば感染することもあるデルタ株。しかもここがピークとは思えない勢いで、陽性者が増えているなかで、日常の景色が少しずつ変わっていくのを感じる。

 先日、マスクなしでランニングしている人に、「マスクしろ!」と怒鳴っている人がいた。その強い口調に、「はぁ?」と苛立ち、ランナーが立ち止まる。怒鳴っている人の口からも、マスクなしランナーの口からも、エアロゾルがブワーワワワワーと広がりコンクリートからの熱風が漂うのが見えるような気持ちになる。周りの人は見てません、聞こえていないというふうに足早に2人から距離を置きたく、立ち去る。私もその1人。ピリピリした空気からはできるだけ早く逃げたい。とはいえ私も最近、鼻マスクのスタッフには「鼻が出てますよ」と言うようになった。注意するほうもされるほうも、一瞬ピリッとする。

 東京都の自宅療養者は先週1万人を超えた。無症状者だけではなく、入院の調整がつかないために「待っている」人もいる。今年1月から5月まで、陽性が確定していたのに医療にかかれず自宅で亡くなった人は120人を超えたことが発表されている。今夏、さらに自宅での死者が増えてしまうことは、今の現実からは免れないだろう。欧米のように、トラックにご遺体袋が積まれる映像を見なくても、十分に医療は逼迫し、私たちの安心・安全は既に大きく奪われている。

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私たちが止めるしかない