だが、バイデン大統領は国民に向けての演説で、「米国の戦争を終わらせるための決断を後悔していない」と述べ、駐留米軍の撤退の正当性を改めて強調した。
そして、タリバンが予想以上のスピードで支配地域を拡大させたことに関し、「アフガニスタンの指導者はあきらめて国外に脱出し、政府軍は時に戦わずして崩れ落ちた」と批判した。
そのうえで、「アフガニスタン軍自身が戦う意思のない戦争を、米軍が戦うべきではない」と訴えた。
さらに、米軍の駐留継続は「米国の国益に合致せず、米国民が求めているものでもない」と断じた。
バイデン政権がアフガニスタン撤退を急いだ背景には、泥沼となった地域介入から米軍を引き揚げ、中国とロシアに対する軍事的抑止力を強化するという戦略があった、とも捉えられている。
たしかに、特に中国の経済力、軍事力の強大化は、いまや米国にとっての脅威であり、米中対立の激化は日本にとって重大な問題である。
今年4月16日の日米首脳会談では、何とバイデン大統領は、台湾をめぐっての米中戦争という事態が生じないように、日本に期待したい、と強調したのだ。そのことを日本に求めるために、初の首脳会談の相手に菅義偉首相を、日本を選んだのである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年9月3日号