イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 しかし、1回目の投票でも河野氏は岸田氏に及ばなかった。繰り返しになるが、安倍氏の影響力の強さを思い知らされた。なぜ、安倍氏はそれほどの力を持ち続けているのか。

 安倍氏は、森友、加計、桜を見る会、さらに河井克行元法相と案里夫妻の前時代的な金のバラマキなど、スキャンダルを連発させていて、国民の評価は高くない。自民党最悪の内閣と批判する識者も少なくない。

 だが、安倍氏は米国のトランプ前大統領、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領とも良好な関係を築いた実績がある。さらに、小選挙区制になって、党の執行部の公認が得られないと選挙で当選できなくなって、自民党の議員たちは首相のイエスマンになってしまった。菅首相が辞意を表明しても、その意識は変わらなかったのであろう。安倍氏からすれば、岸田氏はやりやすいはずである。少なくとも、脱原発、女系天皇を主張せず、安心感がある。新総裁の人事を見ても、岸田氏は安倍氏の一番のイエスマンだ。

 国民には自民党に対する不満が大きく、岸田氏はそれを払拭できるのか。秋の衆院選では、野党がかなり議席を増やすのではないか。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年10月15日号

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