レオス・キャピタルワークスの深澤祐介マーケティング部長は「資産所得倍増プランが、投資ビギナーの活性化につながればうれしい」と語る(撮影/写真映像部・高野楓菜)
レオス・キャピタルワークスの深澤祐介マーケティング部長は「資産所得倍増プランが、投資ビギナーの活性化につながればうれしい」と語る(撮影/写真映像部・高野楓菜)

「金融庁が腰を上げたことに証券業界は拍手喝采ですが、現物株と先物の損益通算など何年も『要望止まり』の政策もあり、NISAの拡充案は全く楽観できません。まずは税制改正大綱をどこまでクリアできるかどうかが焦点です」(大手証券会社幹部)

 2022年12月に公表される税制改正大綱への記載と2023年新春の国会審議を経て、どんなに早くても4月。証券会社のシステム変更の都合もあり、おそらく2024年1月から新しいNISAに衣替えするのが既定路線だろう。新しいNISAを実際に国民が利用できるようになるまで、あと1年以上……と考えると、足取りは重いといわざるをえない。

 そんな折、9月22日午後(日本時間23日未明)に岸田首相はニューヨーク証券取引所で講演し、NISAを恒久的な制度にする考えを表明した。制度そのものの恒久化に関しては通過しそうだ。

 投資家が気になるのは新たな投資上限額だろう。日本証券業協会は2022年7月、英国のISA(個人貯蓄口座)制度の2万ポンド(約320万円)を参考に、年間投資枠の拡大案として「つみたてNISA 60万円、一般NISA 240万円」の合計300万円を例示している。ただ、この金額には野党の反発が予想され、どう着地するかは政治判断になりそうだ。

 議論の難航が予想されるのは総額ベースの非課税枠だ。現行制度では、一般NISAが120万円ずつ5年間で最大600万円などと非課税枠が決まっている。

 仮に年間300万円ずつ最長40年間まで認めるとなったら、総額1億2000万円。富裕層優遇として世論の反発は必至だ。

 財務省も税負担の公平を重視する立場から非課税額の抑え込みに動くだろう。しかし、非課税枠が増えなければ個人の資産形成促進という本来の政策目的が損なわれてしまう――。

「現行NISAを短期売買に利用する投資家が一定の割合でいることに財務省は不快感を示している。売却益非課税の適用に最低1年保有などの条件が付くのではないか」(霞が関関係者)との見方もある。検討事項が増えるにつれて決定が遅れる可能性は高まる。

 NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)の口座開設の一元化も金融庁の「要望」に記載された。もっとも、NISAは資産形成なので金融庁、iDeCoは年金なので厚生労働省と管轄官庁が異なるため、投資枠拡充より実現のハードルは高い。

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