野党共闘が不発に終わった衆院選。その理由は何なのか。東京都世田谷区長の保坂展人さんと政治学者の中島岳志さん、共同通信編集委員の竹田昌弘さんが語り合った。3人がYouTubeチャンネル「船を出そう!」で議論した内容を再構成した、AERA 2021年11月15日号の記事を紹介する。
※記事の前編<大物落選の裏に後援会の高齢化 躍進の維新の会は浮動票の受け皿に 衆院選を識者が振り返る>から続く
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保坂:「ボトムアップの政治」を掲げて立憲が結成され、4年が経ちました。(代表辞任を表明した)枝野幸男さん、(幹事長の)福山哲郎さんらは努力したと思います。ですが、共闘も含め当時の立派なスローガンを実行できるのかを考えてほしかった。
中島:本当に政権交代を目指しているとは思えない選挙でした。共産や社民、れいわの協力なしには政権交代は成しえません。なのに、枝野さんは党首討論会で単独政権を目指すと明言し、野党共闘の意味が見えなくなりました。
竹田:連合の共産嫌いを意識しているのだと思います。次の参院選やこの先の衆院選で解決すべき課題です。一筋縄ではいかないでしょう。
■東京12区で亀裂見えた
中島:その問題はもちろんありますが、本当にそれだけでしょうか。2019年参院選で、立憲は苦戦する国民民主党に手を差し伸べませんでした。それどころか静岡では候補者が対立。現場の人にとって強い抵抗感を抱くきっかけになったと思います。実際は(連合の)立憲に対する不信感も大きいのではないでしょうか。
竹田:的を射た指摘です。
中島:枝野さんが辞任を表明しましたが、別の新しいリーダーが野党を統合するのが現実的です。現状、国民民主も自民に隣接してしまうギリギリのところにあると思います。野党の亀裂が見えたのが東京12区でした。
竹田:自民も立憲も候補者擁立を見送った選挙区ですね。
中島:そうです。共産の池内沙織さんが野党統一候補になりましたが、連合東京が公明の岡本三成さんの支援を表明。共闘を目指すなら枝野さんが共産と手を取り合うべきなのに、連合を意識したのかそうした場面は見られませんでした。
保坂:世田谷・目黒など東京西部では野党共闘が成立したと思います。共産はかなりの候補者を降ろし、野党がリードできる情勢を作りました。
中島:統一化によって立憲が接戦に持ち込めた選挙区では、比例は共産と考えた支援者も一定数いたでしょう。一つひとつの勝ちパターンは次の選挙にもつながると思います。
──候補者が一本化されなかった選挙区もありました。
中島:立憲の候補者に共産が実質ノーを突きつけた選挙区ですね。野党共闘が深まるほど、この問題も浮き彫りになります。
保坂:難しいですね。でも、最後は言葉でフレームを作るしかない。その政策枠からはみ出た人を候補にしないことです。もう一つ思うのは、選挙区制度を変える時期にきているのではないかということです。