逆に非課税になりやすいのはiDeCoのつみたて年数や勤続年数が長く、かつ退職金が少ない、または退職金をもらえない人。自営業者など公的年金が少ない人。
「受取時に税金を払う必要のある人は、現役時代も高所得者だったはず。高所得で普段から多額の税金を払っている人ほどiDeCoの掛け金が所得控除されるメリットは大きくなります。
現役時代に得した所得税・住民税の額を考えれば、お釣りがくることも多いはずです」
年収400万円の場合、ざっくりした試算だが、給与所得控除が124万円、基礎控除が48万円、社会保険料が約57万円になる。
これらの控除を年収から引くと課税所得は約170万円で、所得税率は5%。得する所得税は「iDeCoの年間つみたて金額27万6000円×5%」で1万3800円。
住民税の税率は所得にかかわらず10%が一般的なので、「27万6000円×10%」で2万7600円。毎年、合計4万1400円を節税できる。
20年間iDeCoを続けたら、節税額の合計は約83万円になる計算だ。
高所得者――仮に年収1200万円の人なら年間9万1080円、20年で約182万円の節税となる。
節税効果は自営業者も同じ。たとえば課税所得約500万円の個人事業主が毎月6万8000円(年間81万6000円)をつみたてた場合、所得税と住民税で年間約24万5000円が得になる。20年続ければ約500万円の節税に。節税分だけで一財産、築けるほどの効果があるのだ。会社員でも自営業者でも、高額所得なら現役時代の節税目的だけでiDeCoを使う価値はある。
<編集部追記>『AERA Money 2022秋冬号』で本記事の校了後、退職所得控除に関する一律課税案が出ました。「どんなに長く働いても、短期間しか働いていなくても、退職金に対する課税は同じに」。この行方がどうなるかで、iDeCoの受取金への課税にも影響が出ます。
◯仲岡由麗江(なかおか・ゆりえ)/SBI証券で投資信託のサービス拡充やiDeCoのプラン構築に関わり、2021年8月よりレオス・キャピタルワークス。セミナーも得意。資産運用の普及に務める
(構成/編集部・中島晶子、伊藤忍)
※『AERA Money 2022秋冬号』から抜粋