映画「愛のまなざしを」は、12日から渋谷・ユーロスペースほか全国公開 (c)Love Mooning Film Partners
映画「愛のまなざしを」は、12日から渋谷・ユーロスペースほか全国公開 (c)Love Mooning Film Partners

 若いうちは、映画に出演するたび、興行成績に振り回されることにも苦しめられた。

「興行成績がいいと、内容に関わらず『よかったね』と評価されるし、お客さんが入らないと『失敗』の烙印を押されてしまう。ドラマにしても視聴率に左右されるので、『本当に観てくれている人は、どこにいて、どう思っているんだろう?』っていう疑問が頭をもたげて、『その人たちに会ってみたい』という気持ちが湧いて舞台に挑戦しました。そうしたら、拍手の音に感激して」

 そんな経験を通して、「今自分が俳優としてやること」にたどり着いた。

「映画では監督、ドラマや舞台では演出家と呼ばれる人たちの、期待に応えたいと思います。求められていることを、なるべく過不足なく上質にやる。年齢を重ねるうちに、考え方がどんどんシンプルになっていると思います。とはいえ、これも通過点で、あと10年したら、『あの頃の俺は馬鹿だった』『あの発言は間違いだった』と言っているかもしれないですが(笑)」

(菊地陽子 構成/長沢明)

仲村トオル(なかむら・とおる)/1965年生まれ。東京都出身。1985年映画デビュー。「あぶない刑事」シリーズは全作に出演。白井晃、野田秀樹、前川知大らの舞台にも出演。主な映画出演作に、「K−20 怪人二十面相・伝」(2008年)、「劒岳 点の記」(09年)、「行きずりの街」(10年)、「22年目の告白-私が殺人犯です-」(17年)など。TBS日曜劇場「日本沈没-希望のひと-」が放送中。

>>【後編/仲村トオルが舞台で痛感したこと「300%の音圧の拍手が聞こえた」】へ続く

週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋