消費者の生活に寄り添うから見えてくること(イラスト:サヲリブラウン)
消費者の生活に寄り添うから見えてくること(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 メインパーソナリティーを務めるTBSラジオ「生活は踊る」の人気企画に「スーパー総選挙」があります。年に1度、リスナーのみなさんが愛するスーパーマーケットに1票を投じる、お祭りのようなイベント。コロナ禍になってからはしばらく控えざるを得ず、今年は実に3年ぶりの開催となりました。

 TBSラジオは関東ローカルのラジオ局ながら、全国からさまざまなスーパーへの投票が寄せられました。誰かの「大好き」は対象のことをよく知らずとも、聞いているだけで楽しい気分になるから不思議です。

 1位は4連覇のオーケー。ここ数年で一気に認知度がアップした印象です。2位は埼玉を中心に店舗展開しているヤオコー、3位がライフ、4位がロピア、5位が群馬を拠点にしたベイシアでした。

 店舗数が多い順にはならないのが興味深い点で、9位には長野のツルヤがランクイン。文化堂は、たった19店舗で10位にランクインしました。

 私が最も感心したのは、投票者同士に横のつながりがないはずなのに(組織票らしきものはなかったので!)、各人の「好き」ポイントが店ごとに共通していた点です。

 たとえばA店なら「とにかく安い」、B店なら「総菜が美味しい」、C店なら「品揃えがユニーク」。購買活動を通し、それぞれの店の売りが、ちゃんとお客さんに伝わっているからコメントが似通ってくるのでしょう。

 店頭にコーポレートメッセージをでかでかと掲げているわけもなく、接客や品出しや価格で「売り」がしっかり体現される。並大抵の努力では、こうはいかないはずです。スーパーは競合だらけの市場ですし、食卓を支える重責も担っています。使い分けされることも大前提でしょう。差別化は簡単ではありません。

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