ジャーナリストの田原総一朗氏は、台湾問題に対して日本は何ができるのか、問いかける。
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11月16日、バイデン大統領・習近平国家主席による米中首脳会談がオンラインで行われた。3時間半に及ぶ会談で、米中対立最大の核心であった台湾問題は平行線で終わったようだ。
私が米側から得ている情報では、中国が2024、25年くらいに台湾に武力攻撃をする可能性が高い、と判断しているようだ。
実は、4月16日にワシントンで行われたバイデンと菅義偉首相(当時)の首脳会談でも、このことが論議されたようである。
日本では大きな話題になっていないのだが、このバイデン・菅会談は前代未聞なのである。
これまでは、米国で新しい大統領が登場すると、最初は米英首脳会談で、日米首脳会談はそれ以降になることが多かった。それが今回は、いきなり日米首脳会談となったのである。
これは、バイデン大統領が日本にいかに大きな期待を抱いているか、という証拠である。
どのような期待を抱いているのか。もちろんバイデン大統領にとっての最大の難問は米中対立だ。
かつては米ソ対立が深刻な問題であった。
だが、ゴルバチョフが登場して、ソ連の機構が事実上解体され、米ソ冷戦は終わった。
ところがその後、中国が新たな脅威となった。しかも、ソ連とは違って、イデオロギーでは対立しているのだが、経済的、技術的には中国と深い関わりが生じているのである。
米国はニクソン大統領の時代に、ソ連を孤立させるために、あえて共産主義の中国と協調関係を結んだ。毛沢東、周恩来を口説いて具体的に協調関係に持ち込んだのはキッシンジャーである。
米国が中国と協調関係を結んだことで、日本はそれまでは台湾を国家として認めていたのだが、慌てて中国との協調関係に切り替えた。それを強行したのは田中角栄である。
トウ小平が経済における競争の自由化を認めたことで、2000年代に入って、中国は大躍進を遂げ、経済力で日本を抜いて世界第2位となり、5G技術では米国をしのぐ状態となった。