「やっと狭いアパートを引っ越しました。粗大ごみを出してるときに、同棲男も捨てました。やっと別れられた」
当時を思い出した目で、話は続く。
「それまでずっとできなかった断捨離ならぬ『男』捨離に踏み切れたのは、えいっと別れられるお金が貯まっていたからです。
月30万円あれば、20万円で生活して10万円ずつ蓄えに回せます。着実に暮らしていける。お金を稼ぐことは自由を得ることなんだと、家を出たとき実感しました」
男捨離を果たした西原さんが移り住んだのは家賃が10万円を超える物件だ。
「引っ越してみて発見がありました。家賃が10万円を超えるような部屋は、大家さんが劇的に優しいの(笑)。移った先では大家さんの方から『長く住んでね~』『ここ修繕しておいたよ』って。家賃が2倍以上になるとこんなに違うのかと驚きました」
■人生の自由は有料です
最後の西原さんのセリフは非常に印象的だった。
「自分で稼いだお金で、ちょっとだけ広いところに住んで、それから土地を買って家を建てました。35年、漫画を描き続けてきて、なんか一言いうとしたら『人生の自由は有料』ですかね」
◎西原理恵子(さいばら・りえこ)/1964年、高知県生まれ。武蔵野美術大学卒業。1988年『ちくろ幼稚園』で漫画家デビュー。1992年『恨ミシュラン』が大ヒット。1997年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2004年『毎日かあさん カニ母編』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、2005年『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞、2011年『毎日かあさん』で日本漫画家協会賞参議院議長賞を受賞。『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(2010年テレビドラマ化)などお金がテーマの著作も。最新刊は『りえさん手帖2』(毎日新聞出版)、『ダーリンは75歳』(小学館)など
(編集・文/綾小路麗香、伊藤忍)
※『AERA Money 2021秋号』から抜粋