さすがプロ!水回り清掃の「意外な顛末」
(イラスト:サヲリブラウン)
さすがプロ!水回り清掃の「意外な顛末」 (イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 インターネットは私の深層心理を覗いていると疑いたくなる時があります。今回もそうでした。だって、風呂場や洗面所の経年汚れが少し気になるなと思ったら、SNSに水回りを清掃してくれる業者の広告が出てきたんですから。業者にしてみれば、大掃除の時期に向け、ぼちぼち宣伝でもしておくかってところなんでしょうけども。

 これもきっかけと、いくつかの業者を比較検討し、某大手に依頼することにしました。トイレ、風呂場、洗面台まとめて税込み3万7600円。高いのか安いのかわからないけれど、ピカピカにしてくれるなら価値はあるはず。

 ネットで申し込むとすぐに電話が掛かってきて、翌々日には若い女性と中年の女性の2人組がやってきました。どちらもテキパキと手際よく、これなら安心とソファにドカッと座っていた私。すると、風呂場担当の若い女性スタッフがこう言ったのです。

「お客様、エプロンを外したのですが、ご覧になります?」

 エプロン? なにそれ。聞けば、バスタブの側面についているカバーだそうで。そんなの外せるんだという驚きと、中を見たい好奇心がないまぜになったまま風呂場に行くと……。エプロンの中、びっしりカビが生えているじゃあありませんか! 気持ち悪い!

 ギョッとする私にスタッフは神妙な面持ちで言いました。「エプロン内部の清掃はオプションで、4620円追加料金がかかります」

 なるほど、見せてから決めさせるなんて商売が上手い。基本サービスがどこまでカバーしているか、初めて依頼する人は知らないでしょうし、カビを目にしたら気持ち悪くて結構ですとは言えないもの。

 私には商売人が物やサービスを提案してくる方法(成約までのクロージング)を見るのが好きという「癖」があり、彼女の鮮やかな手腕をもっと見たいという欲望がどんどん湧いてきてしまいました。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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