ティアラや勲章を着用したロングドレス姿で成年の行事に臨む天皇、皇后両陛下の長女愛子さま/2021年12月5日、皇居
ティアラや勲章を着用したロングドレス姿で成年の行事に臨む天皇、皇后両陛下の長女愛子さま/2021年12月5日、皇居
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 愛子さまが成年を迎えた12月1日、成年にあたってのご感想の文書が公表された。この文書に加え、これまでに書かれた作文などから見えてくるのは、確かな文才とぶれない姿勢、そして人柄だ。AERA 2021年12月20日号の記事を紹介する。

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「愛子内親王殿下ご成年に当たってのご感想」が12月1日に公表された。愛子さまは、ぶれない。読んでわかったことだ。

 20年を振り返り、多くの人々への感謝を綴(つづ)った愛子さま。これからのことは、こうあった。

<成年皇族の一員として、一つ一つのお務めに真摯に向き合い、できる限り両陛下をお助けしていきたいと考えております。そして、日頃から思いやりと感謝の気持ちを忘れず、小さな喜びを大切にしながら自分を磨き、人の役に立つことのできる大人に成長できますよう、一歩一歩進んでまいりたいと思います>

■通底している価値観

 愛子さまらしいな、と感じた。言葉遣(づか)いやトーンに見覚えがあったのだ。少し考え、学習院女子中等科の卒業記念文集に愛子さまが書いた作文「世界の平和を願って」を思い出した。

 修学旅行で訪れた広島を書いたものだが、「感想文」ではなく、「平和論」になっている。「ご感想」と特に重なると感じたのは、ほぼ最後のこの一節だ。

<空が青いのは当たり前ではない。毎日不自由なく生活ができること、争いごとなく安心して暮らせることも、当たり前だと思ってはいけない。なぜなら、戦時中の人々は、それが当たり前にできなかったのだから。日常の生活の一つひとつ、他の人からの親切一つひとつに感謝し、他の人を思いやるところから「平和」は始まるのではないだろうか>

「空が青い」は作文の書き出しを踏まえていて、巧みな構成なのだが、ここでは「ご感想」との重なりを見てみる。文字遣いはやや違うが、共通する言葉がある。「一つ一つ」「感謝」「思いやり」だ。「日常の生活一つひとつに感謝し」という表現は、「ご感想」の「小さな喜びを大切にしながら」に重なる。

 通底しているのは、「小さなことを大切にし、互いを思いやり、努力を積み重ねる」といった価値観だと思う。そういう営みへの信頼感がトーンとなっている。それが平和への道で、成年皇族の日々。言い換えるなら、成年皇族の道は、平和に通じる。愛子さま、深い。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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