「本来スポーツのルールとは、それを楽しみたいと思った人たちがお互いに話し合い、自分たちで作ってきたものです。法律も同じ。『上から降ってくるのではなく、自分たちの意思が反映されてできあがっていくもの』という、民主主義の根幹の考え方がうまく浸透していない背景があると思います。スポーツにおいてこそ自分たち自身でルールを変えていく感性が豊かでないといけないのに、いつの間にかそれを失い『ルールは国際競技団体から降ってくるもの』と思ってしまっているのでは」
「たとえば、スポンサー契約を透明化したくても内容の公表は企業秘密の面で法的に難しい。そんな問題があるのなら、『これほど国民の税金を使うイベントがそれでいいの?』と法のあり方を問えばいい。『招致するなら法律のこの部分を変えてくれ』と議員に陳情したっていい。スポーツの『政治からの独立』は政治の思い通りにはならないという意味であり、『政治を通じて社会を良くしてはいけない』ではありません。そこの感覚の鈍化で、政治がらみになりそうだとひとまず『声を上げず固まっておこう』みたいな傾向があると感じます」
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2022年10月24日号より抜粋