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 東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件はなぜ防げなかったのか。大会組織委員会の理事を務めた中京大学の來田享子教授に聞いた。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。

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──東京地検特捜部は、大会スポンサーの選定をめぐって組織委元理事で電通元専務の高橋治之容疑者を受託収賄罪で逮捕・起訴したほか、組織委前会長の森喜朗元首相を参考人として任意で事情聴取。さらに大会スポンサーの駐車場サービス「パーク24」を関係先として家宅捜索し、社外取締役を務める組織委元副会長の竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)前会長を任意聴取したとされる。汚職事件を防げなかった組織委の責任は極めて重い。

 中京大学の來田享子教授が組織委理事に就任したのは2021年3月。女性蔑視発言をした森氏が同年2月、橋本聖子五輪相(当時)と会長を交代したタイミングだった。

「スポンサー選定はもう終わっていましたが、そもそも理事会で承認する事項として位置づけられていなかったようです。私は理事会ごとに出されるプレスリリースも過去にさかのぼって確認しましたが、そこにもスポンサー選定に関連する内容は一切ありませんでした」

──五輪のような大イベントでの汚職は想定でき得るもの。組織委がチェック機能を果たしていなければ、「なぜそのスポンサーに決まったのか」「なぜこの広告会社なのか」という問いが市民やメディアから出てきてもいい。だが、そうはならなかった。來田さんは「ここが重要なポイントです」と話す。

 市民が問わなかった理由について、「『五輪の本来の意味』が情報として十分に伝わっていなかった」ことを挙げる。

■機運醸成の強調だけ

「五輪憲章で掲げる『スポーツを通じて友情やフェアプレーの精神を培い、世界平和を目指す』などにのっとり、答えを探しつつ政策も見直していく。これが社会運動としての『オリンピック・ムーブメント』の価値です。しかし、組織委もJOCも『大きなスポーツイベントが来るぞ、盛り上げるぞ』と機運醸成だけを強調する情報提供しかしませんでした。五輪の本来の意味の普及が、他国のNOC(国内オリンピック委員会)に比べて非常に弱い。それが、市民から『問う声』が上がらない結果につながったと思います」

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