社会生活を送っていたら、労働問題に巻き込まれることもある(gettyimages)
社会生活を送っていたら、労働問題に巻き込まれることもある(gettyimages)

 ミニ保険は2006年の保険業法の改正によって生まれた新しい業態だ。「保険金の上限額1千万円以内、保険期間2年以内」と規定され、当初は52社が扱っていたが、今や116社に倍増している。

 急成長を後押ししているのは、参入ハードルの低さだ。通常の保険会社を設立する場合、最低10億円の資本金を集めなければならず、金融庁長官の認可が必要だ。一方、ミニ保険を扱う「少額短期保険業者」も関係当局の審査はあるが、資本金は1千万円あればよい。

 異業種からの参入も多い。有線放送のUSENは16年にミニ保険を扱うグループ会社を設立。取引先の店舗に向けて、設備の損害や食中毒を起こした場合の損失などを補償する保険を売り出した。家電量販最大手のヤマダホールディングスも専業の会社を立ち上げ、家財保険などを販売している。いずれも”本業”との相乗効果を狙ったものだ。

 日本少額短期保険協会によると、ミニ保険には大きく分けて「家財」「生命・医療」「ペット」「その他費用」の4分野がある。最もメジャーなのは家財保険で、全体の契約件数の大半を占める。例年はペットが2位だったが、コロナ保険の人気で、今年は生命・医療が上回った。

 なんと言ってもミニ保険の特性が色濃く出るのは、「その他費用」だ。

 スマートフォンの修理や盗難紛失を補償する「スマホ保険」、入院や通院の際に家事・育児の代行費用をまかなう「家事代行費用保険」、旅行先が雨だったときの旅費を補償する「お天気保険」など、ユニークな商品がずらり。月々の保険料が数百円のものも多く、ネットで手軽に申し込める。

 なかには、ストーカー対策の保険まである。

 あそしあ少額短期保険は20年、「and ME」という商品を発売した。きっかけは一人の女子学生の声だった。同社が都内の大学で講義をしたときのこと。「若者が抱えるリスク」のテーマで意見を募ると、「今、彼氏ともめていて、ストーカー被害を心配している」という悩みが挙がった。

 警察庁の調べでは、日本では年間約2万件のストーカー事案が起きている。そこで月500円で加入できる保険を開発。被害を受けた場合、防犯カメラや補助錠の購入費や、ホテル宿泊費、引っ越し費用などを補償する。警備会社とも提携し、ガードマンの駆けつけサービスや、GPS搭載の防犯端末の利用料も対象だ。

 被保険者は10~60代で、男性も1割程度いる。最近では、ストーカーの被害に遭いやすい地下アイドルやユーチューバーの間でも口コミで人気が広がっているという。

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