林:この先やりたいことがいっぱいあるんでしょう?

松任谷:続けることが夢ですね。それは自分のモチベーションにかかっている。もしやめても誰からも文句言われないし、雇用も十分創出してきたし、あとは自分自身がクリエーターとしてどのぐらいやっていけるかだけ。だから自分の問題。

林:このごろ「コンサートやめる」って言う人がいるけど、ユーミンはそんなことないですよね。

松任谷:ま、いつかはやめるときがあるけれど、わからないようにやめる、私は。

林:コンサートのとき、踊るの大変になってきました?

松任谷:そんなことない。そのときの自分に合ったしつらえになってるし、踊りだって変化してきてるしね。エッセンスさえ自分で取り込めればいい。話は変わるけど、林さん、日大の理事長に着任されるとお忙しいでしょう?

林:すごく忙しい。朝から晩までですよ。みんな「どうせ週に3回行くぐらいだろ」とか思ってるけど、私、毎日行ってますよ。まあ、たまに自分のスケジュールが入りますが。

松任谷:でも、ちょっとおもしろそうだな、というところから入ったんじゃないの?

林:かなりおもしろそうだと思った。だから一生懸命やってるし、けっこう楽しい。

松任谷:痛いところ突くかもしれないけれど、要職に就いて書くということから遠ざかってしまうと、危機感、感じたりするでしょう。

林:危機感、感じる。私は職人みたいな作家で、常に肩慣らしをしていかないと書けないから。このあいだ短編を二つ書いたけど、ほかの人が連載してるのを見て「いいなあ」と思うし、悔しいから、これからは理事長室で書けるように態勢を整えようと思ってる。そうじゃないと困っちゃう。私だって1冊ぐらい残して死にたいわよ。

松任谷:いや、残るものはいっぱいあると思うけど。

林:残らない、残らない。これから残るものをつくらないと。

松任谷:文学にしろ映画にしろ接するのが大変じゃない。そういう意味ではポップスって有利だなと思う。口ずさめるんだもん。小説を書くのって、体力もモチベーションもものすごくいると思う。

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