林:すごいと思います。「こういうストリートファッションするには、体形がきちっとしてないと着れないよ」って何かでおっしゃってるのを聞いて、ため息のみですよ。
松任谷:ブランドだって、一発でわかるようなのを着てると老けるよね。
林:モノグラムがついたやつですね。昔、ユーミンがアライアを着てて、世の中の女の子がアライアに憧れて、私も南青山のフロムファーストビルに見に行って、「これがユーミンが着てるアライアというものか」と思ったことがありますよ。
松任谷:「布の彫刻師」と言われたね。
林:おしゃれとか、いつも挑戦してるところは変わってませんよね。
松任谷:好きだからね、洋服。
林:この50年間、たまりにたまったお洋服はどうしてるんですか。
松任谷:たまる一方なんですよ。
林:メルカリに出そうなんて思わない?(笑)
松任谷:アハハ。あんまり思わない。愛着がある。それぞれに思い入れが強いから整理できないし、体形も変わってないから役立つの。頭の中がインデックスになっていて、「そういえばあれがあったな」って。きょう着てるのなんて、20年前にミラノで半分つくったグッチのスーツなんだけど、最近「荒井由実」が何かとフィーチャーされることがあって、荒井由実時代にパンツスーツをよく着てたんですよ。だからスーツ率高いです、このごろ。
林:いまに「ユーミン博物館」ができたときに、ユーミンのお洋服がダーッと並んで……。
松任谷:博物館はつくらない。そういう3次元的なものは意味がない。絶対なくなる。石原裕次郎記念館もなくなったし。ハコモノはダメ。だから歌をやっててよかったの。人の心に入り込めば、死ぬまで持っていけるんだもん。どこにでも運べるし、風のように街を漂ってるし。
林:「私が死んでも私の歌は残ってほしい。その願いがかなえられつつある」ってこのあいだテレビで言ってましたよね。
松任谷:そうね。まあ、一里塚ぐらいかな(笑)。