──『安倍三代』でインタビューに応じた、成蹊大学の宇野重昭・元学長が同様の指摘をしていますね。教え子の一人だった晋三氏について「はっきり言って彼は、首相として、ここ2、3年ほどの間に大変なことをしてしまった」と語り、安保法制に関しては「憲法解釈の変更などによって平和国家としての日本のありようを変え、危険な道に引っ張り込んでしまった。国民も、いつかそう感じる時がくるでしょう」と述べています。台湾有事が話題になっていますが、安保法制に基づく「存立危機事態」が適用されるようなことがあれば、そのとき国民は晋三氏の負の遺産を思い知ることになるのでしょうか。

 ええ、アベノミクスなる経済政策なども同様でしょう。これは安倍政権だけの責任ではないものの、長期の経済低迷から抜け出せず、産業構造改革もイノベーションも起きないまま、ひたすら金融緩和に突き進んで日銀は国債を膨大に抱え込んだ。各国の中央銀行が利上げに舵(かじ)を切り、円安が急進展しても日銀が動かないのは、もはや手足を縛られて動けないのが実態でしょう。やってる感だけは振りまいて何の成果もなかった対ロ、対北外交などを含め、安倍政権には誰もが認める政治的遺産などないというのが実情です。

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2022年8月15-22日合併号より抜粋