左側は20日に厚労省へ提出された尾身氏らの専門家提言案、右側は批判を受け、21日に再提出された修正提言
左側は20日に厚労省へ提出された尾身氏らの専門家提言案、右側は批判を受け、21日に再提出された修正提言

 全国知事会と日本医師会との会合(20日)でも、全国知事会長の平井伸治・鳥取県知事が「『会食の人数制限さえしっかりすれば出歩いてもいいし、接触を増やしてもいい』と聞こえた感がある」、「知事たちが困惑している」などと批判していた。

 批判が相次いだことを受けて、尾身氏らは21日午後、軌道修正に追い込まれた。AERAdot.は尾身氏らが厚労省に提出した専門家提言案とその修正提言を入手(いずれも非公開)。

 20日の提言案は、「人流抑制でなく人数制限」と人流抑制を否定するような表現だったが、21日に再提出された文書では「効果的な対策においてはかつて実施した一律かつ広範な”人流抑制”という方法もある」「感染状況等の実績も踏まえて、各都道府県知事の判断により”人流抑制”を加味することもあり得る」と修正されていた。

 また20日の提言にあった「(重症化リスクが少ない若年層は)検査を実施せず、臨床症状のみで診断を行うことも検討」という記述は削除されていた。

 オミクロン株の感染爆発という重大局面でなぜ、このような混乱が起きたのか?官邸関係者がこう話す。

「尾身さんが科学的知見を踏み越えた形でスタンドプレーをしてしまった、というのが実情です。感染拡大が止まらない中、自治体、国民に対し混乱を招いたという意味で、尾身会長の振る舞いは罪深いです。官邸内もさすがに今回は怒り心頭です。多くの専門家、医療関係者も同様です。感染症専門家が尾身さんに問いただしたところ、『人流抑制はやはり必要』と認めたと聞いています」

 厚労省アドバイザリーボードのメンバーは今回の騒動についてこう語る。

「これまで尾身さん、われわれは滞留人口を問題視し、人流抑制を訴えてきたわけで、デルタからオミクロン株に変化したからといって人流抑制に意味がなくなったということはない。感染対策と経済活動を両立させるため、効率的にポイントを絞ると言いたかったのでしょうけど、勇み足だった」

 AERAdot.は尾身氏へ一連の経緯について取材を申し込んだが、回答はなかった。(AERAdot.編集部)