
Netflixシリーズ「新聞記者」で、報道に対して強い信念をもつ社会部の記者を演じる米倉涼子さん。自身がこれまで演じてきた力強い女性とはひと味違う人物像への思いと、現在地を語った。AERA 2022年1月24日号から。
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——政治スキャンダルに正面から切り込み、大きな話題を呼んだ映画「新聞記者」(2019年)。Netflixシリーズ「新聞記者」は、“社会派エンターテインメント”というコンセプトはそのままに、全6話の新たなシリーズとして生まれ変わった。
物語の中心に描かれるのは、ある学校法人への「国有地払い下げ問題」とそこから派生した「公文書改ざん問題」。米倉涼子は、権力の不正を追い、やがて遺族と行動をともにしていく東都新聞社会部の記者・松田杏奈を演じる。
“威勢がよくて力強い、闘う女性”。松田は、米倉がこれまで演じてきたそんな役柄とひと味違う、熱い闘志を内に秘めながらも静かに突き進む女性だ。
米倉:私自身、「新聞記者」の撮影に入ったころは、これまで演じてきた役に近い、力強いキャラクターとして認識していたところがありました。でも、藤井道人監督は「人に寄り添う記者でありたいから、もっと静かに、我慢してほしい」と。最初は迷走しましたし、動揺もしました。
「思いを伝えていきたい」という気持ちも強かったですし、普段の声量も大きい方なので、「ボリュームをコントロールする」ということ自体が難しい。
これまでは体を痛めてでも突き進んでいくような役が多かったので、動きを制限しながら進んでいく、ということになかなか慣れなかったんですね。ハートは燃えているけれど、音量は抑えていく。圧力釜のようなイメージでしょうか。

■複雑な思いに触れた
——撮影に入る前には実際に新聞社に取材に行き、同世代の記者たちに話を聞いた。
米倉:記者さんたちは、瞳が鋭いですよね。一つ一つの動きを見る目が鋭いな、と取材をしていて感じました。
一方で、記者の方々の思いと取材される側の思い、その二つが必ずしも一致しないということ、立場によって捉え方の違いがあり、ときに噛み合わないこともあるということを知ることができた気がします。
深く取材を進めようとすると、取材される側の気持ちを思っているだけでは突き進んでいけない。取材対象に対しても、完全に寄り添ってしまうとそれ以上、取材を続けられなくなってしまう。そうした複雑な思いにも触れることができました。