声優は役者さんと違って、いろんな作品を掛け持ちでちょこちょこ参加していく仕事のスタイルが一般的です。朝はAというアニメのアフレコに参加しながら夜はBのアニメに出ていたり、次の日の朝はCというナレーションをやって、その後Dという吹き替えをやっていたりというように、毎週何本もの作品にかかわります。
なので、それぞれ濃度の違いはあれど、参加する本数はどんどん増えていくので、「ここではこの表現が正解だったけど、あっちでは全く通用しない」ということもよくあります。だからある意味で、作品に対してニュートラルになれたり、俯瞰して考えられることもある。シチュエーションによっては、これまでのキャリアを作品に生かせることもあるんだと経験則で分かってきたので、今はなるべく自分の意見を出すようにしています。
――これからどんな役にチャレンジしたいですか。
自分は31歳なのですが、今の自分の年齢に近い、等身大のキャラクターをやってみたらどうなるんだろうと興味がありますね。リアルでナチュラルな表現ができたら面白いだろうなと思います。
あと少し話はずれますが、業界全体で変えていけたらいいなと思うことが一つあります。『呪術廻戦』はTVシリーズから始まっているので声優中心のキャスティングになっていますが、例えばこれがオリジナルの大作アニメーション映画で、それを今回と同じような規模で全国公開しようとなると、メインキャストが声優ではなく、俳優やタレントの方になることも多いと思います。そういう手法がダメだというつもりはないし、求められる声質や演技の雰囲気とか、アニメ映画のビジネスとしての側面を考えれば十分理解できるんですが、ただ一方で、アニメやゲーム、吹き替えなど普通の声優業をやっているだけでは、たどりつけない領域があるということを、20代を通して痛感しました。なので、業界全体でそういう状況を打破できたら、もっと面白くなるんだろうなと思いますね。
(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)
【前編】『呪術廻戦』狗巻役・内山昂輝が語る 「おにぎりの具」「呪言」のセリフに込めた喜怒哀楽