内山さんが演じた狗巻 棘。(C) 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社
内山さんが演じた狗巻 棘。(C) 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社

――大きな挫折がないというのはすごいですね。内山さんは物事を器用にこなせるタイプなのでは。

 いえ、器用なほうではないと思います。声優の技術を専門学校とかで学んだ経験がないので、基礎的な面で未熟な部分は多かったですし、全部スタジオの現場で一つ一つ教わっていきました。テクニカルなことを本当に何も知らないまま、子ども時代から10代を過ごしてきたし、大人になっても、おそらく常に足りない部分がありながらやってきてしまった。それを日々のトライ&エラーで、足りない部分を少しずつ補いながら進んでいきました。知らないことやできないことは本当に多かったですし、それをとくに気にせず駆け抜けてきてしまったという感じです。

――キャリアを重ねる中で、仕事のやり方が変化してきたところはありますか。

 この3~4年ぐらいで、前よりもコミュニケーションを重視するようになった気がします。子どものころから仕事をしてきたせいか、以前は大人が設定したハードルを飛び越えればOKという感覚でやってきました。声優は、監督やスタッフが作りたいものの部品として組み込まれる仕事だから、それはある意味で正しいとは思います。

 でも、僕自身も大人になって年を重ねていくと、大人も120%パーフェクトな人なんていないと感じるし、作品の制作途中はどんな完成品になるのか読み切れない部分がある。その中で、「こうかな」と懸命に探りつつ作っているんだなとだんだん分かってきたんです。セリフの収録中、袋小路に陥りそうな状況では、「こういうのはどうですか」とこちら側がズバッと意見を言ったほうが、案外スムーズに進んだり、風通しがよくなったりすることがあるとわかってきました。

 そうした学びの中で、スタッフサイドに「どういうものが作りたいですか」と聞いた上で、自分からも邪魔にならない程度に意見やアイデアを出したり、ディスカッションしたりすることを重視するようになった感じがします。ある意味でずうずうしくなっているし、ずけずけと物を言うようになってしまった(笑)。

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声優だけやっても「たどりつけない領域」がある