漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「となりのチカラ」(テレビ朝日系 木曜21:00~)をウォッチした。
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「名は体を表す」と言うけれど、タイトルがそのまんま内容を表す遊川和彦脚本ドラマ。「家政婦のミタ」は家政婦の三田さんの話だし、「過保護のカホコ」は箱入り娘・加穂子の物語だ。
そして本作の主人公・中越チカラ(松本潤)もその名の通り。困っている人を見かけると、声をかけようかと中腰のまま悩みつつ、結局チカラになるべく奔走する。つまりはおせっかい。
そんなチカラ一家が引っ越してきたマンションは、まるで社会の縮図だ。
402号室の小学生・好美(古川凛)は父親から虐待されている気配?
404号室の占いおばさん・道尾頼子(松嶋菜々子)は、あやしげな水と数珠を売りつけてくる。ちなみに松嶋のババァっぷりが「意外とナチュラルねぇ」(Uber EatsのCMより)と言いたくなるほど見事。
503号室で暮らすのは、認知症気味の柏木清江(風吹ジュン)とその孫。震災で両親を失った高校生・託也(長尾謙杜)は介護する子供「ヤングケアラー」だ。
303号室は外国人技能実習生として来日したが、職を失ったマリア(ソニン)。601号室には世間を震撼(しんかん)させた事件の犯人・少年Aと噂(うわさ)される謎の青年(清水尋也)がいる。
どうです? この社会問題でおなかいっぱいマンション。でもリアルなようでリアルじゃない。
向かい側の喫茶店からチカラがマンションを眺めれば、すべての室内が丸見え。エブリタイム映画「裏窓」状態。
チカラはベランダに出て来た少女・好美の手旗信号を確認しつつ、認知症・清江がボヤを出せば駆けつけ、少年A(?)の行動にドキドキする。
遊川作品はいつも、遊川氏の壮大なる社会実験。遊川印の箱庭だ。社会問題を詰め込んだそのボックスの中に、異分子である主人公を放り込む。