デスクワークに疲れたらオフィスの一角でリラックス(撮影/写真部・松永卓也)
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 短期集中連載「起業は巡る」。第3シーズンに登場するのは、新たな技術で日本の改革を目指す若者たち。第6回は、企業法務をAIで改革する「LegalForce」の代表取締役CEO角田望氏だ。AERA 2022年3月28日号の記事の2回目。

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 そして2人は、17年3月にZeLoを設立。翌月にリーガルフォースを立ち上げた。小笠原がZeLoの代表で角田が副代表、角田がリーガルフォースのCEO(最高経営責任者)、小笠原がCOO(最高執行責任者、現在は代表取締役共同創業者)という役割分担にした。

 この間、角田が「仲間になってほしい」と口説き続けていたのが、知人を通じて知り合った時武だ。飛行機やロケットを造りたいと東京大学工学部航空宇宙工学科に入ったが、プログラミングにも興味があり同大大学院情報理工学系研究科を修了。16年にDeNAに入った。ヘルスケアアプリの開発を担当し、少人数のチームでデータベースの管理、サーバーサイドの開発まで、ソフトウェア開発に関わるほとんどの仕事を経験した。

「弁護士ってどんな仕事なの」

■試作品に顔が曇る

 エンジニアの世界しか知らない時武は、飲みに行くたびに角田に聞いた。角田が企業法務や国選弁護士の話をすると、時武は「面白い仕事だねえ」と興味津々だったので、角田は「脈あり」と踏んでいた。「実は今度、リーガルテックのサービスを立ち上げるんだ。法務の領域にテクノロジーを持ち込みたい。一緒にやってくれないか」

 担当プロジェクトが一段落し、転職を考えていた時武は「ゼロからイチを生み出す仕事をするなら、まっさらのベンチャーの方が面白いかもしれない」と考え、角田の誘いに乗った。17年10月、「トキちゃん」こと時武はリーガルフォースのCTO(最高技術責任者)に就いた。

 最初に開発したのは契約書の作成に特化した「ウェブエディター」という編集用アプリ。角田と時武、業務委託のエンジニア5人を加えたチームで半年かけてプロトタイプを作った。18年4月、プロダクトを見せると、小笠原の顔が曇った。

「これじゃあ、使えないよ」

 企業の法務担当者や弁護士はマイクロソフトのワードで文書をつくる。だが角田たちが作ったウェブエディターはワードと互換性がなく、法律のプロからみると使い勝手が悪かった。

 時間がなかった。会社の資金源は、角田が個人で借りた2千万円と小笠原の貯金。あとはZeLoの収入だけ。18年3月には京都大学イノベーションキャピタル(京大iCAP)などから8千万円を調達したが、それも同年末には底をつく。残り8カ月で新たなプロダクトを生み出さなければならない。

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