さらに、菊池さんは、こう続けた。

「防衛研究所の人たちが積極的にテレビ出演し、コメントするのも今回が初めてでしょう。個人的に出演できる立場の方々ではありませんから、防衛省としての対応と思われます。ただ、防衛省だけで決められることではないでしょうから、政府が今回は情報を出していったほうがいい、と判断したのかもしれません」

■ウクライナ兵が「どうもありがとう」 

 吉田陸幕長が記者会見した2日前、ウクライナ政府から要請された防弾チョッキやヘルメットなどの自衛隊装備品を積み込んだ輸送機が日本を飛び立った。このような紛争当事国への支援は前代未聞であるが、輸送機がポーランドに到着すると、防衛省はさっそく、こうツイートした。

<ウクライナ近隣国の空港に到達しました。自衛隊の防弾チョッキ等が、ウクライナに届き、祖国を守るために戦うウクライナ人の命を守る「盾」となることを切に願っております>

 しばらくすると、自衛隊の防弾チョッキを身に着けたと見られるウクライナ兵士の写真がSNS上にアップされた。そこには、こんな言葉が添えられている。「domo arigato(どうもありがとう)」。

 この写真について、菊池さんは「間違いなく自衛隊の防弾チョッキ3型(最新型)です。まだ国内の部隊では2型を使っている隊員が多いのに、思い切った供与をしました」。

■「いずれ、装備品は流出するでしょう」 

 当初、防衛省は、防弾チョッキとヘルメットをウクライナに送ることについて「戸惑っていた感じでした」と、菊池さんは証言する。

「ウクライナ侵攻を受けて、防衛省は政府から『何か支援できるものはないか』と、指示されて、防弾チョッキやヘルメットをリストに入れたんです」

 殺傷能力を持つ銃などの兵器ではないが、防寒具や天幕(テント)などとは違い、防弾チョッキやヘルメットは間違いなく戦闘で使われる装備品である。

「当時、制服組の人は、『いくらなんでも実際に防弾チョッキやヘルメットを出すことはないでしょう。防衛装備移転三原則もあるし、法的にも難しい』と話していた。ところが、リストを見た政府は『じゃあ、これでいこう』という感じだったみたいです。とにかく、支援ありきの姿勢で、政府がやると決めたら、ほんとうにあっという間に送ってしまった」

 防衛装備移転三原則とは、「平和貢献」や「我が国の安全保障に資する場合」といった条件を満たせば輸出を認めるもので、2014年に閣議決定された。

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防弾チョッキ「トモダチの証」