その見通しは暗い。11月に迫る中間選挙を前に、ウクライナ問題以外では、民主党・共和党議員が激しく対立する。黒人女性初の連邦最高裁判事としてバイデン大統領が指名したケタンジ・ブラウン・ジャクソンの上院承認をめぐる上院公聴会は、テレビ中継されるため、議員らは有権者向けに真っ二つの主張を繰り返す。
4年ごとの大統領選挙の中間の年に行われる今年の中間選挙は、下院議員全議席、上院議員の3分の1、各州知事など広範囲にわたる選挙で、24年の大統領選挙の行方も左右する。
現在、上院では無党派を含めて民主党がやっと半数を獲得、下院も僅差で民主党が多数派となっている。中間選挙で上下院いずれか、あるいは両院で野党共和党が多数派となると、バイデン政権は政策を通すことがかなり困難となる。ロシアとウクライナの戦争の結果にかかわらず、バイデン政権は中間選挙の結果で骨抜き政権になる致命的なリスクを抱えている。
■強硬派議員でさえ
米国が唯一、ロシアに対抗できる軍事大国であり核保有国であることも、バイデンの手足を縛る。
「真珠湾攻撃を思い出してほしい。9.11同時多発テロを思い出してほしい。私たちは毎日同じような経験をしている」
ウクライナのゼレンスキー大統領は3月16日、米連邦議会でのオンライン演説で強調した。米国人に特に「空から降る」非人道的な攻撃を思い出させ、ウクライナ上空に「飛行禁止区域」を設定するよう繰り返し強く訴えた。これに先立つロイター通信の調査(3月4日)では、米国人の74%が飛行禁止区域の設定を支持している。
しかし、飛行禁止区域の設定はそう簡単に実施できるものではない。強硬派共和党上院議員のマルコ・ルビオでさえ、こう言う。
「(設定は)第3次世界大戦を意味する」
■「全面戦争」の引き金
法的には、飛行禁止区域を設定すれば、ロシア軍の空爆を制限することができる。ところが、設定は、NATOの戦闘機が常時ウクライナ上空をパトロールすることを意味し、禁止を犯して飛行するロシアの機体を撃墜することができる。