ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、その対応をめぐり米国のバイデン大統領は内政的にも外交的にも不安要素を抱えている。AERA 2022年4月4日号の記事から紹介する。
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バイデンの米国内の足元も極めて危うい。
ニューヨーク市内では、英金融大手バークレイズがビル前面の大きな電光掲示板に「ウクライナの人たちと立ち上がり団結します」という文字を表示する。米ファッション大手アメリカン・イーグル・アウトフィッターズの掲示板もブルーとイエローのウクライナ国旗の色で塗りつぶされている。雑貨店やレストランも国旗の色彩を店頭に出し、募金集めのコンサートやアートショーは毎日のように開かれる。街中は「ウクライナ支援一色」だ。
しかし、米国がロシアと武力で直接対決するかは別問題だ。米クィニピアック大学の調査(3月16日)によると、「米ロ間戦争のリスクを回避しつつ、ウクライナへの支援をすべき」とした米国人が75%。「米ロ間戦争になるリスクがあったとしても支援すべき」と答えた17%をはるかに上回った。アフガニスタン・ショックの後、「戦争」「派兵」に対する嫌悪感は、米市民の間でかつてないほど強い。
一方、米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、ロシアによるウクライナ「侵略(インベージョン)」へのバイデン政権の対応について「強く支持」「やや支持」が47%で、「強く不支持」「やや不支持」の39%を上回った。
ただ、大統領としてのバイデンの支持率は42%で、不支持の54%を下回る。01年に起きた米同時多発テロの直後、ブッシュ元大統領の支持率が51%から90%に跳ね上がったのとは異なる(米世論調査機関ギャラップによる)。政権のウクライナ対応が市民の評価を得ていても、内政的にバイデンとしては苦しい「綱渡り」だ。
■議会の主張は真っ二つ
国際政治学者で米コンサルティング会社ユーラシアグループ社長のイアン・ブレマーは、こう指摘する。
「バイデン政権はウクライナ対策ではうまくやっているし、議会も超党派で団結した。問題は、このモメンタムがいつまで続くかだ」