「70歳現役社会」の実現に向けて、国が法整備を進める一方、会社側はシニアにどのような力を求めているのか。
特定社会保険労務士でグロースサポート社労士事務所所長の田邊雅子さんは、「会社が新陳代謝していくためには、役割や責任は若い人に引き継いでいくので、マネジメントなど管理能力はシニアに求めていない」と語る。
田邊さんは、中小企業の社員向けに定年後の働き方に関するアドバイスをしている中で、最近、キャリアチェンジをするシニアを見かけるようになったという。
「ガソリンスタンドを経営している会社があり、シニア社員は整備士の仕事が体力的にきつくなるので、再雇用後は役所に提出する書類を作成しながら、後進の指導にあたってもらっていると聞きました。これから働き続けるためにはITのスキルが必須になるのはもちろんですが、新しい仕事にもチャレンジできるような柔軟な姿勢が求められるでしょう」(田邊さん)
再雇用で働き続ける時、「今までやっていた仕事を続けたい」と思うシニアが多いという。しかし、社内に埋もれている“ニッチな仕事”を探し出して、その仕事をするためにスキルを身につける方法もある。
中でも、社内パソコンのセキュリティー対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)化に対応しきれていない中小企業が多いので、いち早く技術を習得して、プロパー社員として働き続けることも可能だ。
「あるメーカーで70歳になっても働いている人がいます。元々法務部門にいて、今は省庁に提出する書類のチェックを一手に引き受けていると聞きました。句読点の打ち方を間違えるだけでも書類が通らないという独特なルールがあり、作成するためにはスキルが必要。その人しかできない、ということでした。社内でニッチな仕事を見つけてスペシャリストになれば、生涯現役で働くことができます」(同)
1年更新の契約社員という雇用形態にこだわらず、「業務委託契約」という働き方も可能になる。