手製の散弾銃で安倍元首相を撃ち、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也容疑者。事件は参院選の演説のさなかに起きた
手製の散弾銃で安倍元首相を撃ち、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也容疑者。事件は参院選の演説のさなかに起きた
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 2022年7月8日。安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。にわかには信じられない。そんな状況のなか、手製の銃、旧統一教会と自民党、国葬など、さまざまな情報が流れていく。私たちはこの事件をどう捉えればいいのか。AERA 2022年8月1日号は、政治学者・中島岳志さんに聞いた。

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 安倍晋三元首相襲撃事件の一報が入った時に思ったのは、この事件が参議院選挙に影響を与えてはいけないということでした。それは、僕が安倍元首相襲撃事件は、政治テロだと思っているからです。政治テロと認識しないと間違えます。

 なぜなら特定の政治家が行ったある政治的行為に対して、不満を持った人が起こした暴力事件なのですから。

 ここで一番重要なのは、テロの概念です。テロは「Terror(恐怖)」という英語と連動しているように、恐怖と強く関わっています。世の中に恐怖を与えることによって、世の中が変化し、自分たちの思いを達成させるというのがテロです。

 この時、僕が恐れたのは参議院選挙に大きな影響が出ることで、今後さらなるテロリストを生み出してしまう可能性が生まれることでした。

 テロを起こせば選挙は止まるんだ、選挙結果は変わるんだ、ということを示してしまうと、今後どんどんテロが連鎖していきます。

 あの時、考えたのは、この連鎖を止めること、連鎖を最小限でとどめることでした。

 事件から1時間半後ぐらいに、いくつかの政党が選挙戦を中断しました。

 これはすごく危ないと思い、選挙戦を止めてはいけないと、僕の知っている有力な政治家たちに話しました。

 その後、普通に動き始めて日曜日の開票結果は、ほとんど事前予測から変わりませんでした。第1段階としては、そんなに間違えた方向には行かなかったと思います。

 ポイントとなるのは次のフェーズに入った今後です。1921年に朝日平吾という人が安田財閥創始者の安田善次郎を暗殺しました。僕はそれを『朝日平吾の鬱屈(うっくつ)』という本にまとめたことがありますが、これが昭和維新テロと言われる二・二六事件に至るまでの15年間の発端になっています。

■どちらも危ない

 この事件が起きて最初の1週間ぐらいは、朝日に対して厳しい論調でした。ところが、安田財閥の遺産が膨大にあるということが報道されると、財閥は金をためこんでいてけしからんという声が高まります。朝日はそのことを白日の下にさらした、安田はやられて当然と、まことしやかに語られるわけです。それを聞いていた中岡艮一は原敬を暗殺、そして後の昭和天皇にピストルを向けた虎ノ門事件が起こります。

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