
「どついたるねん」(1989年)で鮮烈デビュー、「顔」(2000年)、「新・仁義なき戦い。」(2000年)、「北のカナリアたち」(2012年)など、多くの作品を手がけてきた映画監督・阪本順治さん。監督を目指すきっかけは高校時代にあった。
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高校生のとき、背筋がゾッとする体験をした。
「今思えば不思議な子供でした。両親が、商売をやっていて忙しかったので、小学生の頃は、家の屋根裏にちゃぶ台を持ち込んで、ロウソクに火をつけて、じーっとそこで妄想やら空想やらをしていました。妄想で、その屋根裏の空間が満たされることが好きだったんです。屋根裏の天井に、コウモリの親子がぶら下がっていて、よくそのコウモリたちと会話していましたね」
思春期になると、自分の不満のすべてを親や世間のせいだと思い込んだ。何度も家出や不登校を繰り返し、友人たちを避けるようになった。
「当時は、どうすれば学校をズル休みできるかしか考えていなかった。最初は仮病を使って、次は目薬と水虫の薬を飲んで腹を下してみたり、わざと家の階段から落ちてけがをしたり。それがエスカレートして、ついには文鎮で頭を殴り続けた。ゲーゲー吐いてしまって、病院で診察してもらったら、医者が、『頭蓋骨にヒビが入っています』と。そのときに背筋がゾッとしたんです」