――それでも舞台に挑むのは、そこでしか味わえない感動があるからだ。

相葉:お客さんと緊張感を共有する感覚があります。舞台ならではの一体感というのか、お客さんと一緒に呼吸をしているような、息が止まるタイミングまで一緒、みたいな瞬間があって、そこにすごい達成感があるんですよ。でも、毎回、それを感じられるわけではないので、あまり欲はかかないようにしています(笑)。

 なぞってはいけないんです。舞台は何度も稽古を繰り返して作り上げるものだけど、ナマモノだから。本当に奥が深いんですよ。

■本番前のルーティン

――体調や気分は日々変わる。しかし、舞台の幕が上がる瞬間は、毎日、同じスタートラインに合わせなくてはいけない。それがいちばん難しい。

相葉:コンサート前も、何分前にマッサージに入って、何分前にシャワーに入って、ご飯食べて、と準備しながら、気持ちを高ぶらせていくルーティンがあるんですけど、舞台の本番前もやることは似ています。まず、音楽を聴きます。気持ちがスッと落ち着く曲なら、嵐でも何でもいいんですけど、前回はピアニストを目指していた役だったので、ラフマニノフとかクラシックが多かった。あとは少し汗を流したりしながら準備を進めて、気持ちを高ぶらせながら、沈めていく……。いま、真逆のことを言いましたけど、自分の感覚としてはそうで(笑)。今回もまず曲を見つけて、ルーティンを作っていきたいですね。

――この12年を振り返ると、公私にわたりさまざまな変化があった。自分で大きく変わったと感じるのは「経験値」だ。

相葉:演技をする基礎を作ってくれたのは宮田先生ですけど、他にもドラマや映画の現場などで、素晴らしい演出家の方々と出会うことができて、勉強させていただきました。それが12年分ありますから。ある時期からは「あ、あの時に使った手法だな」と思うことも増えてきたりして。ただ、それが成長と言えるかは、自分ではわからないんですけれど。

 それは演技に限らず、あらゆる方面で言えることかな。年代によって自分の考え方や悩みなどは移り変わりましたが、振り返れば、その時その時をとにかく精一杯、全力で生きてこられたと思う。楽しいこともつらいことも、そこにしかないというか。そこで得たのは、どんなときも腐らず懸命に生きていれば、絶対いい方向に進んでいける、ということ。そういう意味で素敵な30代を過ごせたと思います。

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