実際にVRヘッドセット「Meta Quest2」を装着してみた際の様子
実際にVRヘッドセット「Meta Quest2」を装着してみた際の様子

 昨今、にわかに聞こえてくるようになった「メタバース」という言葉。インターネット上の仮想空間では、すでにもう一つの「社会」が生まれつつある。市役所での手続きやお墓参りなど、私たちの日常も仮想空間上に移行する日がくるのか──。

【画像】仮想空間上につくったメタバース市役所がこちら

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 ゴーグルを着けるとそこは仮想空間だった。

 書類や段ボール箱が雑然と積まれた殺風景な編集部の風景は一変。暖色系の落ち着いた雰囲気の部屋が広がり、窓からは眺めの良い大自然が見えた。ゴーグルを着けているだけで指には何の機器も装着していないのだが、自分の指の一本一本の動きまでが正確にトレースされ、視界に映し出されている。

 昨年10月に世界最大のSNSを運営するフェイスブック社が社名を「メタ・プラットフォームズ」(以下、メタ社)に変更したのをきっかけに、世界中で話題となった「メタバース」。日本国内での利用環境の整備と政策提言を目的に「メタバース推進協議会」が3月に設立し、代表理事に養老孟司氏が就任した。6月5日には自民党青年局がメタバース上で街頭演説を行うなど、さまざまな企業や組織がメタバースの利用を進めている。

 メタバースという言葉にまだ厳密な定義はないが、一般的にはインターネット上の仮想空間を意味することが多い。ゴーグルを着用して目の前の現実とは異なる空間を、自身の分身となる「アバター」となって直に体験するバーチャルリアリティー(VR)などがよく例に挙がる。

 一方で拡張現実と呼ばれ、現実の空間をベースに映像や文字などの情報を加えるオーグメンテッドリアリティー(AR)もメタバースであり、こちらはスマホゲームの「ポケモンGO」などが有名だ。

 現実とは違う空間で、多様な人々と交流できることがメタバースの魅力の一つだ。メタ社のVRヘッドセット「Meta Quest2」を使って世界中の利用者と仮想空間「VRChat」で毎週集会を開き、趣味の話題などで交流しているという利用者にメタバース上で話を聞いた。

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